勝利の神様は、彼女に微笑む。3 (ページ10)

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( 不幸の女神 ) ページ10

A side

『ギータ！！ナイスタックルやー！！』

『もっとやったれーーー！』

『ギータに怪我させんなよーーー』

どうしてだろう、なんで、なんで、

こんなにうるさくて、

いつもはファンの人の声なんて聞こえやしないのに。

ホークスファンなのか、それともファイターズファンなのか、

怖くて、それすら、確かめられない。

ただ、トレーナーさんもコーチもベンチに戻って、

鍵さんがピッチング練習をしている間、

ずっと、そんな声が聞こえる。

幻覚かと思うくらい、自分の被害妄想じゃないかと疑うくらい、

はっきりと明瞭に、私の耳に届くその声は、

自分の存在そのものに嫌悪感を抱いている人が

この世界には5万といることを、

再び解させるには十分だった。

………私はしてはいけないことをしてしまったんだ。

こわい、

こわい、

卓さんのほうを見るのがこわい。

目を合わせるのがこわい、

『……………あんたのせいだよ！！！』

嫌でも、思い出してしまう。

私は、

『…………物分かり悪いなぁ、はやくしろよ。』

『お兄ちゃんはできるのに、あんたはなんで………、』

『すみません、最善は尽くしましたが、』

私は、結局、周りの人を不幸にする。

どんなに私が変わった気になったって、

みんな、わたしから離れていく。

…………信じないって決めたのに。

嫌われるのが怖くて、失うのが怖くて、

結局、信じられなくなるのが、疑ってしまうのが嫌で、

最後には、卓さんだって、みんなだって

離れていくのに、なんで近づいちゃったんだろう。

どうして、近づきたいなんて、思っちゃんたんだろう。

( ……………わたしみたいな人をバカの一つ覚えって言うんだわ、 )