契約 ページ37
「おい理容師テメェ、俺が手塩にかけて作ったヒーリングバス勝手に使いやがったな匂いでわかるんだよダボがァ」
怒りが飛び火してギラスが胸ぐらを捕まれ宙に浮いている。咥えたままのフォークを噛みながらふてぶてしい態度で嵐が去るのを待っているのを見てフィオが、「フォーク危な」と言い、Aはヴィクターに説明を試みる。
「待って!私が教えたの!ギラスが怪我したのもヴィクターが動けないのも…私…が…」
そこまで言って、コントロールが出来ずに涙が零れた。3人が動揺して駆け寄る。
「…A様…あなたに非のある所などありません…一片たりともです…僕は貴方を愛しているのですから」
「…!」
顔を上げると、3人が微笑んで覗き込んでいた。
「愛する者の為に傷つけず何を愛と呼ぶのでしょう」
「…いいえ…そうね…そうだわ…私だって…貴方のためなら怖くない…痛みなんて…」
手を伸ばした先に、ヴィクターの暖かな頬があった。
「ましてや責めたりなんてしないわ…決して…」
「そうですA様…それと、」
そこで体が操り糸に絡まって吊り下げられたように操られ、ヴィクターに腰が抱きすくめられたと思うと、開いた胸に強く口ずけされ、垂れた髪にギラスが口ずけ、放り出された手の甲にフィオがキスを落とした。
「…そう易々と他の男のプレゼントに舞い上がるなんて困ります…貴方は無意識に僕を嫉妬させているんだ…っ…狂おしい程!肋骨が折れようと骨が軋もうとあなたを抱きしめ束縛し離れなくさせてしまいたくなる…」
その時、3人の目は人ならざるものの光を帯びて、Aを見つめていた。
突然、昔父の書斎で読んだ悪魔の本の詳細が蘇ってきた。
ー悪魔とは、人間の欲望に最もよく触れ、最もそれについて理解した存在である。
人間についてよく知っているのは神でも天使でもなく、それに仇なす存在、悪魔であるー
「はぁ…A様……んふ……」
胸に埋もれるこの悪魔は愛欲に溺れている。
ふと、そこでその解説の注訳を思い出した。
ーまた、人の欲望から生まれたのが悪魔と言う説もあるー
人であるこの身で悪魔と恋する事は、神にとって冒涜なんだろうか…?しかし神が自分に何をした?天使が自分に何をしたと言うのだろう。
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作者名:フェンタニル | 作成日時:2020年11月29日 16時