アモーラペリエラットの屋敷 (ページ34)

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その瞳を開くページ34

｢…｣
少年は目を開いた。
机の上で片足を立てて今まで眠るような姿で居た。
緑髪に鮮やかなピンクと紫のカラーの入った外ハネの髪に、スペード型のピアス、ストライプのオレンジとイエローのシャツにシャッポを被った晩餐会の主。
バタンと言う音に顔を上げた少年はため息をついてその主に声をかける。
｢ルティ叔父さん…命令外で勝手に外に出ないでよ…｣
｢マルク、その呼び方はやめてくれないかな？ヴァハムート卿と呼んでくれたまえ｣
悪びれなく卿は首を傾けた。
愛嬌のあるキュートな仕草にマルクと呼ばれた少年はまたため息をついて机から降りる。
｢…それから、主〈あるじ〉ならちゃんとヴァハムートと呼び捨てにする位じゃないと、ね、｣
ヴァハムート卿は少年のシャッポをつついた。
心做しか少し嬉しそうに見えるが、マルクは気がついていない。
幼い子供のように不貞腐れてまた机に乗り足に頬ずえをつく。
｢…なんだか楽しんでるね、僕以上に｣
｢ああ楽しいとも。主従ごっこはプレイで沢山やってきたけど本物は初め｣
｢そこまで聞いてないよ叔父さん｣
マルクはそっぽを向いてしまう。
｢…どうしたんだい？今日は｣
雨が降っている窓が曇っている。
｢…母さんを思い出すよ｣
｢…｣
(なんだ、寂しいのか。)ヴァハムート卿はそっと腕を回してマルクを上から包み込んだ。
｢僕がいるじゃないか｣
しとしととした雨が密やかに泣いている。
｢……｣
思春期ゆえのだんまりとした答えが返ってきた。
それでも、欲しいものが手に入らない事に憂いを帯びているのだ。
(美しいね)
ヴァハムート卿は満足そうに笑った。
彼はこの結末がどうなっても、見届けるつもりなのだ。

(はあぁ、苺ちゃんに次会えるのはいつなのだろう…それから…)

ポケットの中が空腹になったのを気にする。

(気に入ってくれただろうか……)

2人は雨に思いを馳せた。