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ラズベリーコロン ページ32

まるで遅い強襲だった。
扉が何度も破壊されようとしていたかのように、突然開かれた。
黒髪に赤眼の悪魔。
「…ヴィク…ター」
掠れた声でヴィクターの名を呼んだ。
『貴様を生きては返さない』
変容、それは真っ黒な殺意、真っ黒な装束。
「黒髪に赤眼…メフィストフェレスが何の用だ」
『彼女、は、僕の、もの、だ』
「はァ?誰が誰のモノダッテ?」
グルンとそれも変容し恐ろしい悪魔へと変貌する。
『アドラメレク…ゴミ野郎…地獄へ返してやる』
「その呼び方嫌いなんだよ…メフィスト如き騒ぐなウジ虫が」
『黙れ下等生物…貴様か?A様に趣味の悪いドレスを着せたのは』
「いちごちゃんにしてあげたのですよ❤︎嫁入りなので」
『ゴロス』
「おやおやぁ〜?頭は悪くありませんよね?彼女のお父様と契約があったのは事実です…悪魔ならその辺お分かりでしょう?」
『そんなものはクソッタレだ…あの人を…あの人の意思でないものによって汚されたりなんてさせねぇ!』
「…っ…メフィストが偉そうに…」
しかし気圧されているのかヴァハムート卿は少したじろぐ。
『Excita omnia totis viribus(我が力の余す所なく全て呼び覚まされよ)』
「ぐ…」
破壊という破壊が大気を震わせている。
「く…何故だ…僕のものなのに…僕が最初に見つけたのに…」
く、くぅんと唸る犬のようにヴァハムート卿はAに寄り添うとそっと頬にキスをして頬を撫でた。
「浮気するなんて…あんな奴の何処がいいんだ…っ!」
「少なくとも下着を履き替えさせようと迫ったりはしないわね多分」
あれ、意外とやりそうな気もするけど…
「絶対…絶対迎えに来るから…待っててね…僕の可愛い…いちごちゃん…」
涙ながらに語って、ヴァハムート卿は黒い霧となって去っていった。
『野郎!潰す!地獄へ送り返してやる!』
「ヴィクター!ヴィクターやめて」
『止めないでくださいA様!未来永劫この世から存在を抹消するまで止まりませんよ!』
「ヴィクター!私よりあんな奴の事を追いかけるの?私はすぐここにいるのに?」
「永遠にそばに居ます」
ヴィクターは膝まずこうとしたが、その前にAがギュッとヴィクターに抱きついたので、ヴィクターはAを大事そうにヒシと抱きしめた。

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作者名:フェンタニル | 作成日時:2020年11月29日 16時

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