アモーラペリエラットの屋敷 (ページ3)

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✄---------ｷﾘｺﾐｸﾞﾁ----------‐✄ ページ3

そこはやはり寝室だった。
(また記憶がなくなっている気がする…)
起き上がると長い髪が肩に落ちた。
かなり伸びたな…

「おはようございますA様♥」
「お前…なんかツヤツヤしてないか…？」
「気のせいです」
ヴィクターがピシャリと言うと朝食を運んできた。カモミールティーとクロワッサン、ゆで卵、食後にバタークッキー。
こう食事に睡眠、遜色なく整えられているとここが何処かという疑問も湧きにくいので困る…
「美味」
「光栄の至り」
ヴィクターはぽっと頬を赤らめている。
「そうだ髪を切りたいのだけど｣
「難しいですね」
「外には」
「片時も離れていないのにここで離れるなど」
「私のほくろの数は？」
「25個」
「太ももにどんな痣がある？」
「涙型」
「寝言は…」
「プリンの中で寝たい…」
「そんな事言ってたのか」
「ハッ！？誘導尋問！？！？」
「お前…私が記憶をなくしている間何……」
ギクッ
「A様！腕の良いBarber(理容師)を連れて参ります！」
ヴィクターが逃げるように部屋を出ていった。

よし。今のうちに紙を探そう。
記憶を無くしても過去は無くならない。書き留めておかなければ…
棚を見ると冒険小説が幾つか見つける。
「メアリと王国」
「海の悲鳴」
「ドキドキ愛するあの人を閉じ込める方法」
…最後のは変態(ヴィクター)の私物だな。
試しに本を開いて1ページ捲ってみる。
「…囚われのお姫様の話も要ります？」
手袋をした指が滑るように私の腰を掴んだ。ヴィクターだ。
「要らない。私にとって一番必要のない話だもの」
本を閉じて戻した。
ダメだ。ここには無い。
「無駄ですよ…」
冷や汗が流れる。密やかな笑い声がヴィクターから漏れた。
「…愛しい僕のA……」
首筋にヴィクターの吐息と唇が当たる。
「僕の…甘くて…かぐわしい…愛しい果実｣
ヴィクターの中で獣の様なものが獲物を喰らおうとするように牙を見せたのを感じる。
「貴方の瞳は誰のもの？(僕のものだ)貴方の指は誰のもの？(僕のものだ)どこにも逃げられない…」
しかし私は意を決して振り返った。
「っ？！…」
驚いたヴィクターの鼻先に唇を近ずける。
「っ…A様…？何」
「哀れなヴィクタ一人ぼっちが嫌いなヴィクター…」
「…っ」
「人の力を侮ってはいけない」
鼻頭にチュッと口ずけしてやると私はさっさとヴィクターから離れベットに腰掛けた。
「ところで腕の良いバーバー(理容師)は？｣