The whole story〈一部始終〉 ページ20
「…手の怪我を見せて」
「…」
ため息をついたフィオが「Curatio〈治療〉」と指を鳴らすと包帯が出てきて消毒剤と共に治療し始める。
言語化と威勢よく言ったギラスだが、語彙力がないのでフィオはギラスの記憶を途中からほぼ見ることになった。
「まとめると…恐らく彼女は二重人格で…さっき出てきたのはそっちの人格の方の可能性が高い…二重人格なら別人格の方の魂を食べて主人格の魂が残ったとか?…あでもさっき出てきてたし…あーもうわかんない!」
「……」
「なに…?どうかしたの…?」
「…ヴァハムート…聞き覚えがある気がしてな…」
「それ思った!…なんだろ…」
しかし新たな事実がわかった今、更に室内の様子が気にかかる。
(それに…父親と話していたあの声…)
2人はなすすべも無く、ただじっと、扉を睨む。
その中では、ヴィクター・メフィストフェレスが、Aの別人格と戦っていた。
『どうしたよぉ赤眼!…あたしと遊びたいんだろぉ…?』
「お前じゃない…A様が良いんだよ…」
『なんだよなんだよ!ツレナイじゃん!…あたしだってこの子の一部なのに!キィー!イケメンだけどムカつく!』
両腕両足を抑えているが少女とは思えない力で抵抗してくる。
「うるっせぇな…黙れよ…つーか出てけ…今すぐ出てけ…」
『はァァァ??出ていける訳なーいジャーン…アンタ馬鹿ぁ?』
「クッソ腹立つ…」
『ねね、名前呼んでよ、あ、た、し、の❤︎』
「はぁ?…何でだよクソ女…」
『ヤダー!クソ女だって!いーけないんだーいけないんだーつーげ口しちゃうんだー』
「ナッ!…クッソ…」
『えへへ呼んでよ…ねぇ…ヴィクター…』
「……ミアーノ」
『そ、ミアーノ…それがあたしの名前…』
少しだけ大人しくなった所をヴィクターは記憶を食べていく。
『あ〜消えちゃう…でも愚かなヴィクター…独りぼっちのヴィクター…Aが望む限り、彼女は真実を突き止める事をやめないだろう…そしていずれ辿り着く…』
うふふふふふ…と不気味な声が響き渡り…彼女はゆっくりと目を閉じて表情が収まっていった。
「……ヴィクター」
目が覚めたAは朦朧とした意識で目を覚ます。
「A様!…っ良かった…良かった…」
ぎゅっと抱きしめられてヴィクターの香りが舞い上がる。
紅茶とマカロンのような何かのお茶菓子の匂いだ。
それからヴィクター特有の、香水のような香り…
「…ヴィクター…」
呟いてAはヴィクターを抱き締め返した。
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作者名:フェンタニル | 作成日時:2020年11月29日 16時