アモーラペリエラットの屋敷 (ページ2)

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When you open your eyes. ページ2

(あなたは知らなくともいいのですよ…)
「…っ……？」
「お目覚めですかA様」
ヴィクターがカチャカチャと音を立ててお茶の用意をしている。
「いい……香り…薔薇のような」
「ゴールデン・トワール…最高級のニルギリです」
軽やかな指先がティーポットからカップに紅茶を注ぎ入れた。
「これは？」
「アメリカ式ショートケーキです。甘めに味付けしたビスケットを横半分に割って刻んで砂糖をふった苺を挟み、その上にさらにイチゴやホイップクリームをトッピングしてあるとても愛らしい菓子です」
是非A様のお口へ運んで頂きたく、とせがんだ瞳でこちらを見る。
「…」
サク、口に運ぶと軽やかで苺の甘酸っぱい味と、クリームの甘みが溶ける。紅茶を飲むとバラの香りが鼻腔から突き抜けて、満足感で心が満たされた。
「…ほぅ…」
「嗚呼…とろけるようなお顔も良い…」
ゾクゾクと体の震えを自身で抱きとめながら愉悦しているヴィクター。
「奇妙な人ね」
「A様程では♥」
ヴィクターは食べ終わった皿を片付けた。

・・・

夜夕食のシェパードパイを満足するまで食べた後、部屋に戻る。

何か…
天蓋付きのふっくらしたベットに飛び込んだ後何か忘れているような感覚に囚われる。
また目元が霞んできた…お腹いっぱいで…暖かくて…眠い……思わず目を閉じる。すると、ギシ…、と別の人間の体重が沈む心地がする。
(…？)
思わず目を開けると私に馬乗りになるようにヴィクターがのしかかっていた。
(え…？)
しかし微睡みで上手く体が動かない。
「ヴィク、ター…っあっ」
恍惚の表情で服のボタンを外し露出した鎖骨に唇を這わせるヴィクター。その瞬間自分の体から瘴気のようなものが出てくる。
「…ククク…ククククク…あははは♡あーっ…はぁ…ン…ン…A…かぐわしき果実…甘く麗しき悲劇の味だ…」
腰に手を回され上半身が糸の切れた人形の様に後ろに倒れる。突き出た胸元に顔を埋めるようにしてヴィクターが黒い靄を吸っている。
「あ…、あっ…！ン｣
艶めかしい指が、愛撫するように、狂ったようにヴィクターは私を抱きしめた。
「おま…えは…何者…だ…」
「嗚呼……知らなくとも良いのです…貴方はこのまま、悲劇を知らぬまま…そうでないと生きられない…だから…俺が一生ぅ…このまま愛し続ける…」
くす…と笑いながら口ずけをすると、最後の瘴気がヴィクターの舌へ入った。
そこで意識は完全に途切れ、私はベットに倒れ伏した。
「……愛しています」