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When I wake up… ページ1

いつからだろうか…ここに住んでいるのは。
生まれた時から?それにしては壁に一枚も写真がない。古い屋敷…ビターチョコレート色の壁紙が辺り一面わたしを囲んで、逃しまいとしている。
「ヴィクター」
「はいA様」
いつでも傍に控えるこの男はヴィクター。
本名は知らない。本人がヴィクターと名乗ったか私がヴィクターと名付けたのだろう。最近記憶が曖昧だ。
「私はいつからここに?」
「A様…何度も申し上げましたが貴方は事故にあったのです…それでこの屋敷に連れてこられ…」
「前は橋の下から拾ったって言ったわ」
よよよ、とハンカチで目元を抑える演技をしていたヴィクターがピタッと止まる。
「A様………お茶は如何です?」
「話をそらさないでケヴィン」
「ヴィクターです」
笑顔で彼は訂正した。
そうだったかしら?唇に手を当てている間にヴィクターはお茶の準備を始めた。
「…」
改めて彼の姿形を観察してみる。
サラサラの黒髪に真っ赤な緋色の瞳が特徴的。
来ているのはシンプルだが華のある執事服…至って奇妙な点はない。ただ彼のそばに居ると、後ろにも目があるのかと思う程彼の視線を感じる。
一挙一動を追われているようで、時折体にぞくりとした痺れが走るのだ。
「…はぅ……っ」
指先から腰を這うような感覚。
「…おや、A様どうしました…?」
唇を歓喜に震わせたように醜く歪めヴィクターが今初めて知ったと言う顔で心配面をした。
「っ…!」
確信犯だこの男は。間違いない。
いつかここを出ようとした記憶がある…だが思い出せない…
水辺に浮び上がる花の種の如く時折記憶の断片と思しきものを感じながら唇を噛むようなこの日々を、私は未だ送っている。
「…っはぁぁ…♥A様…ン……お綺麗ですよ…その''必死''なところも…」
ヴィクターの美しい顔を近ずける。唇は始終歪んだ扉のように開ききったままでぶつかるかぶつからないところをかするように唇を傾けてはその手袋をした細い指先を私の腰にきつく沈ませる。
「…っあ…っ…」
喉から絞り出される息が悲鳴のように飛び出て必死に意識を保とうとするがままならない。ヴィクターがこうする時は特に意識が朦朧とする。
「…っ…やめろ!隻眼の???め!」
口から出た言葉が一部現実世界で溶けた。
(発音できない…?また…?)
「ああいけません…A…真実など何の役にもたたない…」
甘い囁きと共に現実世界が大きく歪み、私は静かに意識を失った。

When you open your eyes.→


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作者名:フェンタニル | 作成日時:2020年11月29日 16時

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