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駅の近くの路上に車を停める。
隣が公園になっているここは街灯はあるけれどコンビニなんかがないから車内も見えにくいだろう
ハンドルに両腕をのせてその上に顎をのっける
幾人かの家路を急ぐ人達を見送ってもAはまだこない
そういえばどこの駅から乗ってくるのか聞かなかったな。
LINEでもいれてみようかとポケットに入れてあったスマホを取り出してふと顔を上げると
改札口に見慣れた顔がみえた。
いつもなら白い頬が今日うっすらと桜色に染まっていて
きょろきょろと辺りを見渡すから緩やかに髪の毛が揺れる。
あぁ可愛いなと思う。
久しぶりに見たAは俺の胸をざわざわとさせた
胸躍るってこういうことなのか？なんて今時中学生でも思わないようなことを考えて
Aが俺に気づくのをワクワクして待つ
こちらを向いて『あっ』っていう顔をして
その顔が嬉しそうほころんだのを見た俺はそれだけで迎えに来たことに満足した。
なのに………
なんなのさ
誰なのよそいつ
なぜかAの隣に立っているスーツを着たサラリーマン風のオトコ
何か話してんなと思っていたらAの頭を撫でるような仕草をしてまた改札口に戻って行った。
Aはソイツを見送ってからこちらに足早に歩いてきた
そっと後部座席に乗り込むA
「和也さん、ありがとう」
俺の後ろから、運転席のヘッドレストにつかまるようにして話す。
俺の頭のすぐ後ろにAがいるのが体温でほんのり暖かくなった空気とかすかに漂うAの香りから感じられる。
そのわずかな気配でいつもなら嬉しくなるのに今日はどうやらそうもいかない。
和「さっきのヤツ誰？」
あ、俺『おかえり』も言ってねーやなんて思ったけど
一度こぼれてしまった言葉は戻すことなんかできないし。
「会社の同期です。駅から歩くには遅い時間だからって心配して送ってきてくれたんです。」
ちょっとためらうようにAが話してくれるけど
その声音がいつもより温度の低いことにさらに苛立ちを覚えた。
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作者名：雪月
| 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/personal.php?t=verbena
作成日時：2013年12月21日 7時
