822話 ページ6
重力操作、と認識した時にはもう遅かった。
遥弥は周囲の氷柱を水素と酸素に分解し、手を伸ばして咄嗟に彼女の手首を掴むが、
自分には上から下に向かって力をかけられ、離さざるを得なくなってしまう。
「ユキ!!」
「つ、ツナ!」
宙を浮いて、おそらくは古里炎真の下へ飛んでいこうとする彼女を見上げ、10代目が声を上げる。
しかし満身創痍のその思い通りに体が動くことはなく、その手は彼女に届かない。
ちっ、と舌打ちした遥弥は、氷を分解したことで作り出したわずかなスペースを利用してトンファーを振るう。
仕込みトンファーの先端からしなって飛んでいく鎖が、彼女の胴体に巻きついた。
「遥弥さん!」
「そう簡単にいかないよ」
リルが消えたのはまったくの想定外だったが、ユキが狙われているのは想定外ではない。
沢田綱吉の大切な姉。言い換えれば弱味__ユキはそうならないように日々努力を重ねていたが、シモンにとってはそれが『事実』だろう。
だからこそ遥弥はユキの護衛についたのだ。ここまでの事態になるとは不甲斐ないが____。
「雲雀遥弥、か。……君は、ツナ君たちと近い距離にいるのに、どうやらいろいろ違う立場にいるみたいだって聞いたよ。アーデルハイトから」
「へえ。いったいどこがどう違うと思うわけ?」
「さあね。それは僕には関係のないことだし。
……それから、鎖を外さないと、ここで全員を殺す」
「なっ……!?」
空中で静止しているユキが目を剥いた。
しかし当然だろう、というように炎真は首を傾ける。
「別に僕達は、ここにいる人間を今ここで皆殺しにしたって構わないんだよ。多分、それができるし。
それじゃボンゴレに苦しみを味わわせることが出来なくなるけど……まあここで抵抗するっていうなら仕方ないよね。ここにいる人間を殺すことにするよ」
「ま、待って……やめて下さい! そっちに行きますから!!」
「ユキ!?」
何を、と遥弥が眉を寄せた瞬間、ユキの体に巻きついていたはずの鎖が、他ならぬ彼女自身の手によって解かれる。
そしてそのまま、ユキは炎真の下へと降り立った。
「ユキ! なんで、ユキ!!」
「ツナ……ごめんなさい」
ユキが背を向け、アーデルハイトが笑う。
「今日この日がボンゴレ終焉の始まり。そして新生シモンの門出だ……聖地に帰りましょう」
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作者名:夜野兎×さにー☆彡 x他1人 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hovel/AKOwww1
作成日時:2018年10月1日 7時