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885話です ページ39

『……にしても』

ベッドの上で足をバタつかせていた、ティナさんがふと口を開く。

『この部屋なんっっっにもないねぇ。ユキちゃん暇でしょ?』

この部屋には、廊下に通じる扉と、ベッド、ソファー、そしてアンティークな造りをしたテーブルしか置いていない。

せめてテレビぐらい置いててくれればいいのにね!!とティナさんは拗ねるように口を尖らす。暇かと問われれば暇だ。

けれど文句は言えない。何せ私は“人質”なのだから。
苦笑を零す私にティナさんは何か思いついたのか、あっと声を漏らした。

キラキラとした瞳でティナさんは私の方を見る。


『そうだ雪緒ちゃん!!いいこと思いついた!!』

「……いいこと、ですか?」

『そう!!いいこと!!』

素敵な笑顔を見えるティナさんはどこからかスマホを取り出すといじり始める。それから私に見せてきた。

それは一枚の写真だった。冷めた目でカメラを見つめる幼い遥弥さんと満面の笑みを浮かべ、カメラに向かってピースサインを送るティナさんの二人の写真。

「……これは…?」

『昔の私と遥弥君だよ!!この頃の遥弥君、とっても生意気でね、手懐けるのに苦労したよぉ』

「恭弥さんが小さくなったような感じなんですね」

『だよねぇ。まあ恭ちゃんの子供だからね。ほら目元なんて本当そっくり!!』

「本当だ……そっくりですね」

その不機嫌そうな姿の遥弥さんが少し悠弥に似ているような気がした。そう言えば彼は今、どうしているだろうか。

『もっとあるよ?見る?』

「え……でも。遥弥さん怒るんじゃ…」

『気にしない気にしない。今ここに遥弥君はいないから怒られることはないよ!!それにユキちゃんが笑顔になるから幼い頃の写真の一枚や二枚、どうってことないんじゃないかな…?』

「……ティナさん、ひとついいですか?」

『ん?何かな』

「この写真の数々、どれも遥弥さんと目が合っていないような気がするんです。もしかして……』

恐る恐るティナさんに尋ねるとティナさんはにっこりと何も言わずに笑った。どうやら今私の推測したことが正しいみたいだ。……盗撮は犯罪ですよ、ティナさん。

『平気だよー。あの子がどうのこうの言っても実力の差がありすぎるからね、負け戦はしない主義だよ、遥弥君は』

それに勘づいていると思うし、と零すティナさんは私にカメラのレンズを向ける。

『ほらユキちゃん、笑って。記念に撮ってあげる』

「……結構です!!」

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作者名:夜野兎×さにー☆彡 x他1人 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hovel/AKOwww1  
作成日時:2018年10月1日 7時

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