彼の倅が時間旅行をしてきたようですがどうすればいいですか？【リボーン/第十七章】

800話 ページ33

「ねぇえええ聞いてよ遥弥兄さん！！」


珍しく何も無かった日の夕方。

昼頃、ちょっと散歩してくると商店街に出ていった綾が、随分と不機嫌に家に戻ってきた。

ちょうど台所で夕食の下準備を終え、デザートを作っていたところだった遥弥は、手を止めて背後の綾を振り返った。


「何、どうしたの？ 騒々しいね」

「そりゃーもー腹の立つことがあって！ ……あっ今日のおやつはレモンパイ！？ いいねぇ！！ じゃっ早速いただきまー……」

「ちょっと、手を洗ってからにして。……こんなことまでいちいち言わないといけないなんて、君は幼稚園児かい？」

「うはーい」


素直に頷いて洗面所に向かった綾が、三十秒足らずで戻ってくる。

本当にちゃんと洗ったのかと思わず目を眇めたが、彼女は遥弥が何か言う前に「ちゃんと洗ったよ」と言った。


「だから食べていい！？」

「夕食前だから程々にね。ユキと沢田にも明日持って行って。

……それで？ 話って何」

「あー！ そうそう！ それなんだよ！！」


興奮気味に身を乗り出した綾が、いかにも不機嫌ですというように再び顔をしかめる。

これは珍しく相当怒っているようだ。……と、いうことは。


「……ユキに何かあったのかい？」

「ええ！？ なんでわかるの！？」

「わかるよ。君達兄妹はユキに関することとなると熱くなる節があるからね」


皿を棚から取り出し、パイを切り分けた遥弥がその皿を綾に手渡し、居間へいけと目で促す。

頷いた綾がフォークを手に居間まで移動して座布団に座り、遥弥も彼女の前に座った。


「それで、何があったって？」

「おとなりファミリーの加藤ジュリーってやつが軽々しくユキをナンパしようとしたんだよね。セクハラ紛いの距離にまで近づいて。

……はーあ、縊り殺してやればよかった」

「姉さんの口調真似するのやめて」


なまじ顔が似ているからイライラしてくる。


「なんなのあの男。出てきたのはパチンコ屋だったし。18歳以上立ち入り禁止だっての！ 字が読めないのか！！

それだけでも風紀乱してるのに！ ユキにまであんな風に顔を近づけるなんて！！ 兄さんに咬み殺してもらいたい！！」


ほんと意味わかんない！！ と叫ぶ綾はだいぶ荒れている。


……不備のある説明で意味わかんないのはこちらだが、少なくとも愉快な事態ではなさそうだ。

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