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「良かった、金ちゃん戻ってきてくれて助かったわ」
「白石、なんかあったん？」
「いや、ちょっとな」
言いにくそうに越前君を見やった先輩は、それからわたしの方を見た。
「朽葉、機嫌治ったか？」
「はい。すいません、早くこの癖治します……」
「まあ今回は、朽葉の一等大事な金ちゃんのこと言われとったからなあ。気持ちは分かるわ」
後輩のフォローも忘れず、「じゃあ、越前君にごめんなさい言えるな？」と背中を押してくれる白石先輩は素晴らしい先輩だと思う。今は後ろに抱き着いている金ちゃんをスタンドに配置して、越前君の方に歩み寄った。
「ごめんなさい、越前君」
「……別に、俺も煽りすぎたし。それに、」
鈍い金太郎には、あんたみたいなのが丁度いいのかもね。
そんなこと言われたら、にやけてしまう。お似合い。口角が上がるのを抑えられないまま、本音を言った。
「わたしも、越前君とテニスしてる金ちゃん、楽しそうで好き」
「あ、そ」
素っ気なく返事をして、越前君は帽子の鍔を深く被り直した。それが見えたのも束の間、突如視界が真っ暗になった。この顔に当る硬いのは、金ちゃんの胸筋だろうか。
「あー！徠夢！浮気はあかんで！！ワイ以外のことそんな目で見たらあかん……！」
「え、」
「いくらコシマエでも徠夢はっ、徠夢はワイのもんやもん〜〜！！！」
「ねえ金ちゃ、くるっ、苦しい」
「こら金太郎！彼女のことモノ扱いしたらあかんで！！」
そこなんですか、白石先輩────。
ぎゅう、と更に力強く抱き締められて、金ちゃんの独占欲に魅せられて。この幸せのまま、窒息死したらもっと幸せだなあ。微かな意識の中で、そう感じた。
「ねえねえ越前、照れてる？」
「照れてないっス」
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作者名：あられ | 作成日時：2021年12月1日 1時
