ざいぜん の めんへら彼女 ページ11
ぱしゃ、とカメラアプリでキレイに飾り付けされたパンケーキを撮る。このカフェは最近オープンしたばっかやから、ちょっとしたレビューでも書いとけばブログのネタにはなるやろ。
「財前、ええ写真撮れた?」
「まあまあやな」
「あとでその写真送って」
「はいはい」
見た目よりも食い気な目の前の女、朽葉は既にメインのパスタを黙々と頬張っとった。勿論、その隣にはセットのパンケーキが置いてある。
「なあ朽葉」
「なに」
「なんで俺誘ったん」
朽葉に続いて俺もパスタに口をつける。周りには女性同士の客、カップルなどなどが楽しそうに話をしていた。
「あかんかった?」
「別に、あかんくはないけど。けどこういうのって、女子同士とかで来るもんちゃうん」
俺らの仲は、特別良い訳やない。この春四天宝寺中に入学して、いかにも関西なノリに着いて行けんかった俺と、そんなノリを得意の愛想笑いで流す朽葉。根っこが同じな俺らは波長が合って、廊下ですれ違った時に、はたまた体育で一緒になった時にまあまあ話すくらいだった。
知り合い以上友達未満、みたいな朽葉に誘われた時はとりあえずOKしたものの、ただ疑問だった。
「女友達とはオープン2日目に行った」
「はや」
「ここのパスタ、美味しいから。前食べたの以外も食べたかってん」
「じゃあ、またその人らと行けばええやん。てか、白石部長気になる言うてたやろ、なんで誘わんかったん?」
白石部長の名前を出せば、朽葉はパスタソースに浸けていたパンをこちらに向けて、少し目を細めた。
「あの人は……なんかちゃうんよな」
「なんか」
「まあ、それはそれで楽しいんかもしれんけど」
けどな、と朽葉は、ぼーっとこちらを見ているのか分からない真っ黒な目に俺を映した。
「一番一緒におって楽なんが、財前やったから」
「は……」
「財前しかおらんかった、笑わんくても安心できるひと」
ああ、そうなんや。遅れて返事をする。照れたように目を逸らして、フォークにパスタを巻き付け出した朽葉に心をくすぐられて、思わずカメラを向けて撮影ボタンを押した。
「え、今何撮った?」
「俺も朽葉には気ぃ使わんでええわ」
「……なら良かった」
自然と口角を上げたまま伝えれば、朽葉も今度は赤くなった頬を隠さずに笑った。とく、と脈打つ鼓動すらも心地良かった。
今度、学校で名前呼んだろ。
「結局何撮ったん?」
「……後ろの壁の絵や」
「ほんま?ちょっとズレてる思うねんけど」
1人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:あられ | 作成日時:2021年12月1日 1時