後ろの正面 rb ページ13
セミが叫ぶ夏。私は地元に帰省していた。
辺り一面田んぼが広がり、道の脇にはお地蔵さん。
ド田舎という言葉が相応しい。
「ただいま。」
暑い道を辿って、実家の扉を開ければ、母親が台所から顔を出す。
シワが増えたな。町1番のマドンナも時間には抗えないらしい。
「ご飯出来てるわよ。」
香ってきた味噌汁の香りに、歩く速度が上がる。
一汁三菜。和食の基本を抑えた食事に、指が伸びる。
「こら！手洗ってきなさい。」
渋々洗面所へと向かった。
「そう言えば、同級生が行方不明になってたわよね無事なのかしら」
他愛のない会話の最中、母親が口を開いた。
あの子。私には心当たりがあった。
「生きてるよ。あいつが死ぬわけないじゃん。」
人より背が高いせいでいじめられていた私を守ってくれた、ちっちゃい男の子。
ボロボロになっても、自分より大きな相手に立ち向かっていく姿を思い出す。
そんな奴が、簡単に死ぬもんか。
「ご馳走様。ちょっと散歩してくるね。」
「え？もう遅いわよ！？…気をつけてね。」
食器をさげ、懐中電灯、水、石、軽食をもって外へ繰り出した。
昼より幾分か、暑さが和らいでいる。
あの時も、こんな暑さだった。
「おい！肝試し来るよな！！！」
腹が出たガキ大将が、喚き出した。
汚い笑みを浮かべ、私と＿＿＿を見下す。
「は？行くわけないやろ。誰がお前の言いなりになんねん。」
その言葉にカチンと来たらしいガキ大将が拳を振り上げる。
目標は、もちろん＿＿＿だ。
「やめて！！…いくから、手出さないで」
A…!!と、心配する声がするが、笑顔で大丈夫と返す。
心底心配そうな顔を浮かべる＿＿。
10時に学校に集合だと告げられ、私達は家に帰り、道具を取りに行った。
「…暗いね。」
10時なんて、寝てる時間だ。手元の懐中電灯の明かりでは心細い。
「俺が前行くから。」
「何カッコつけてんだよ！とっとと行くぞ！」
そもそもなぜ、学校で肝試しをしているのか。ガキ大将とその取り巻き曰く、降霊術を試したいらしい。
正面玄関から見える大きな階段の踊り場には、大きな鏡が設置されている。
その鏡を割り、
「鬼さん鬼さんおいでください。」
と唱えると、鬼が出てくるらしい。
「だから俺らを連れてきたんか。」
「え？どういう事？」
「鬼が出てこようが、出てきまいが、鏡は割らなあかん。その割った責任を俺らに押し付ける気やで。」
そういう事か。どうせ何も起こりはしないな。なんて思っていた。
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メメントモリ(プロフ) - 黎明さん» 黎明さん、コメントありがとうございます！そう仰って頂けて嬉しいです！今後ともよろしくお願いいたします。 (2021年8月18日 23時) (
レス) id: 8b496c2d67 (このIDを非表示/違反報告)
メメントモリ(プロフ) - ゆうなさん» ゆうなさんコメントありがとうございます。楽しんで頂けて嬉しいです！ありがとうございます。今後もよろしくお願い致します。 (2021年8月18日 23時) (レス) id: 8b496c2d67 (このIDを非表示/違反報告)
黎明(プロフ) - 素敵で、読み終えた後に何処か隙間風が吹き抜けた後の心地を感じました。どの作品も良かったです…！！！ (2021年8月18日 12時) (レス) id: e1d9bdb874 (このIDを非表示/違反報告)
ゆうな(プロフ) - 主様の短編集は初めて見たのですがとても面白く、何度見ても飽きない程でした。本題に入りますが私の好きなお話はやはり朽ちた旧校舎ですかね、あの皆が居るところを想像しながら読むのはとてもわくわくし、その場にいるかのような気持ちになりました！ (2021年8月17日 1時) (レス) id: 53cc08d6c4 (このIDを非表示/違反報告)
メメントモリ(プロフ) - キキョウさん» コメントありがとうございます。旧校舎の続編はなかなか筆が進まない為、Twitterの方でゆっくり更新しようかと考えております。これからも我々怪奇譚よろしくお願い致します。 (2021年4月25日 1時) (レス) id: 8b496c2d67 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：メメントモリ | 作成日時：2019年9月12日 20時
