山道にて sha ページ1
運転が苦手だという彼、シャオロンに変わって山道を運転していた時のこと。
「吸うの辞めてって言ったよね？」
「しゃぁないやん。吸いたいんやもん。」
「…もういい。降りて。」
助手席で煙をたく彼。
さっきまでのムードが一転。ギスギスした空気と、タバコの香りが充満した車内。思えばちょうど山道に差し掛かった時だった。
意地っ張りな彼は歩いて帰るわ！ばーか！ばーか！と暴言を吐いて山道を下っていく。
山の頂上に差し掛かった時私はシャオロンを下ろしたことに後悔した。いくら男だと言えどもここは山道であたりは真っ暗だ。一人で歩いて帰るなんて無茶だ。
さっきまでのイライラとはうって変わり、胸いっぱいの不安を抱えて、急いで道を引き返し、さっきシャオロンを下ろしたところまでアクセルを強く踏んだ。
ふとライトが人影を照らす。
そこにはいじけたシャオロンの背中が見えた。
プッ。クラクションを鳴らす。
彼はバッと振り返って、満面の笑みでこちらによってきた。
もう怒ってないみたいだ。
トントン。ガラスを叩く彼に開いてるよ。と口パクすると、彼はちょっと気まずかったのか、後部座席に乗りこんだ。
それから車内は、明るい空気に包まれた。
あっ。シャオロンが声を上げる。
どうしたの？とミラー越しに彼を見て返事をすると窓の外を指さした。
視線を移すと手の甲をこちらに見せるように腕を挙げた女性が佇んでいた。
私は、
「知ってる？シャオちゃん。普通と反対のことをする人はこの世の人じゃないんだよ。」
へー！物知りやなぁ！と彼が煽るように手を叩く。ふとミラーを見やると、手の甲で音を鳴らす彼が映っていた。
「シャオちゃん、ふざけないでよ怖いじゃ…」
ことの全てを理解した途端恐怖がつま先から這い上がってきた。
私が彼を迎えに行った時から怪異は始まっていたのだ。
私と彼の進行方向は同じなはずなのにライトに照らし出された背中。山を引き返そうとしていた背中。
気まずいだけだと思っていた座席
ふざけているだけだと思っていた拍手
恐る恐るミラーを見るとそこに彼はもう居なかった。
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メメントモリ(プロフ) - 黎明さん» 黎明さん、コメントありがとうございます！そう仰って頂けて嬉しいです！今後ともよろしくお願いいたします。 (2021年8月18日 23時) (
レス) id: 8b496c2d67 (このIDを非表示/違反報告)
メメントモリ(プロフ) - ゆうなさん» ゆうなさんコメントありがとうございます。楽しんで頂けて嬉しいです！ありがとうございます。今後もよろしくお願い致します。 (2021年8月18日 23時) (レス) id: 8b496c2d67 (このIDを非表示/違反報告)
黎明(プロフ) - 素敵で、読み終えた後に何処か隙間風が吹き抜けた後の心地を感じました。どの作品も良かったです…！！！ (2021年8月18日 12時) (レス) id: e1d9bdb874 (このIDを非表示/違反報告)
ゆうな(プロフ) - 主様の短編集は初めて見たのですがとても面白く、何度見ても飽きない程でした。本題に入りますが私の好きなお話はやはり朽ちた旧校舎ですかね、あの皆が居るところを想像しながら読むのはとてもわくわくし、その場にいるかのような気持ちになりました！ (2021年8月17日 1時) (レス) id: 53cc08d6c4 (このIDを非表示/違反報告)
メメントモリ(プロフ) - キキョウさん» コメントありがとうございます。旧校舎の続編はなかなか筆が進まない為、Twitterの方でゆっくり更新しようかと考えております。これからも我々怪奇譚よろしくお願い致します。 (2021年4月25日 1時) (レス) id: 8b496c2d67 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：メメントモリ | 作成日時：2019年9月12日 20時
