捨て犬 2 ページ2
「…で、忘れ物を取りに来たと?」
『はい、丁度鍵開いてたんで…勝手にスイマセンでした…』
何故かしょんぼりとした表情でそう謝罪して来たAの頭に、「別に謝ることじゃねぇよ。」とポンポン手を置く。
兎に角、不審者じゃなくて良かった…
ホッと胸を撫で下ろす俺。
『…あの、霊幻さん?』
「ん?なんだ?」
『その仔犬、どうしたんですか?』
「あぁ、コイツか?カワイイだろ。さっき道端で拾ったんだよ。」
取り合えず冷蔵庫にあった牛乳を温めたものを飲んでいるワン公を、ワシャワシャと撫でてやる。
どうやら食欲はある様だから、一安心と言った所か。
「キャン!」とさっきより幾分元気のある鳴き声を出してこっちを向いたワン公に、思わず頬を緩ませる。
『…』
「?…なんだよ?」
何故か俺の顔をジーッと見てきたAに、眉を潜める。
「俺の顔になんかついてるか?」
『…いや、霊幻さんもそんな風に笑えるんだなぁ、と。』
「んだよソレ?」
意味の分からん事を言ってきたAに、ハテナマークが頭の上で浮かぶ。
『なんかさっきの霊幻さんの笑顔、いつもと違って胡散臭く無かったって言うか…』
いや待て。いつもは胡散臭いって事か?
Aの言葉に対して生まれた疑問をそのまま問おうと口を開いた。
…と、その時。
『とにかく私、その霊幻さんの笑顔
好き
ですよ!』
「!?…お、おう……」
ニカッと笑い、そう言ったAに思わず頬を赤らめる。
そんな真っ正面からどストレートに“好き”なんて言葉発せられたら、いくら28のおっさんの俺でも不意討ちをくらうもんだ。
『いつも今みたいな笑顔だったらモテますよ!霊幻さん!』
「…そ、そうか?」
『絶対そうですって!』
そう言って目を輝かせズイッと顔を寄せてきたAに、思わず目を背ける。
「…俺は、お前の笑顔の方が…」
『?』
「いや、なんでもない。…それより顔!近すぎな。俺に襲われでもしたいのか?」
『!?は、はい!?』
突然の俺の発言に顔を真っ赤にして、慌てて離れたAに「やっと離れたか…」と息を付く。
(私、霊幻さんのその笑顔、好きですよ!)
「っ〜〜!!」
…言えない。
絶対に言えない。
Aのあの、まるで周りに花が咲いている様な眩しい笑顔を見て、
俺はお前の笑顔の方が好きだけどな。
なんて。
恥ずかしくて、絶対言えない。
END
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作者名:目から卵 | 作成日時:2019年2月10日 17時