第5話 ページ6
煉獄杏寿郎side
「あなたは…あなたは…」
「すまなかった」
「違うんです…謝って欲しいわけじゃないんです。あなたと一緒にいたかっただけなんです。ごめんなさい。わがままでごめんなさい」
泣き崩れるAを支える。
地面にポタポタと涙が落ちて、土の色を変えている。
その様子が心苦しくて、必死に彼女を抱きしめた。
「A、俺は…」
「あなたともっと過ごしたかった。増えた家族を慈しみながら過ごしたかった。支え合いながら……過ごしたかった」
何も言えなかった。
俺が未熟なせいでAは死んだ。
あの日、俺が任務になど出ていたせいで、Aは死んだ。
自害した。
自らの命を絶った。
それは一体、どれほどの勇気がいる行動だったのだろうか。
「せめて…せめて貴方に、子だけでも残したかった。私が未熟なせいで、貴方に何もできなかった」
嘘だ。
君は十分すぎるくらい、頑張ってくれた。
俺だけではどうしようもなかったことも君のおかげでなし得たことすらある。
それに何より俺に取って君は希望で太陽だったんだ。
そんな時、Aの後ろに黒い穴がポッカリと開いているのが見えた。
ああ、帰らなくては、戻らなくてはいけない。
これは夢なのだ。
どれだけ心が締め付けられようと、夢なのだ。
夢の中のAに縋るより、現実の竈門少年達を助けなくてはならない。
「A…」
「杏寿郎さん」
何かを決意した目だった。
いつもの柔らかい目からは、想像も付かないほどに、何かを覚悟した目。
「行ってください。その竈門君、助けにいかないといけないんでしょう?」
「ああ」
「でしたら、早く行ってください。私は所詮、夢。あなたが望めば、どんな姿でもあなたの前に現れられますから」
「本当か?」
「本当です、嘘はつきません。ですから、早く…」
彼女は悲しそうないまにも泣き出しそうな目で言った。
「俺はお前のことを愛している‼」
「私もです、杏寿郎さん。あなたを愛していました」
愛していました?
なぜ過去形なんだ?
俺は今も君を愛しているというのに。
「いつか、私に縛られず、新しいお嫁さんでも探して下さい。…そして平和に暮らして欲しいんです。私のことは、忘れて欲しくは無いので、記憶の片隅にでも置いておいてたまに思い出してそんなこともあったなぁって笑ってくれればいいんです」
そう言って笑顔のまま、俺の背中を優しく押した。
262人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
スノードロップ(プロフ) - ユリさん» 最後まで、お付き合い有難うございました!続きですね…!?頑張らせていただきます! (2019年12月11日 1時) (レス) id: 4bbeb34f3b (このIDを非表示/違反報告)
ユリ(プロフ) - 完結おめでとうございます。出来れば続きがみたいです (2019年12月11日 1時) (レス) id: ba2a71100d (このIDを非表示/違反報告)
スノードロップ(プロフ) - ツバサさん» とりあえず、話の流れと大まかな物語は書いているので、更新ペースを上げられれば、と思います!頑張らせていただきます! (2019年12月9日 7時) (レス) id: 4bbeb34f3b (このIDを非表示/違反報告)
ツバサ - この後の展開が気になり過ぎて待ちきれません。更新頑張ってください (2019年12月9日 4時) (レス) id: ba2a71100d (このIDを非表示/違反報告)
スノードロップ(プロフ) - サクラさん» 有難うございます(*^-゜)vThanks!更新ペースは、遅いですが、最後まで見てくれると嬉しいです! (2019年12月2日 7時) (レス) id: 4bbeb34f3b (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ