第3話 ページ4
煉獄杏寿郎side
「千寿郎‼もっと、こうだ‼」
「こうですか?」
「こう、だ‼」
訓練日和の今日この頃。
庭に出て木刀を持ち、千寿郎と特訓をする。
そんな時、唐突に縁側から聞こえてくる愛くるしいその声に、身体中が喜びの悲鳴をあげる。
「杏寿郎さーん、千寿郎くーん。おやつ用意しましたのでー、続きは後にしませんかー?」
ニッコリと微笑み、太陽に当たってキラキラと輝く笑顔に思わず目を細めてしまう。
ああ、美しいな。
縁側に行くと、両手いっぱいに焼き芋を持ったAが柔らかく微笑んでいた。
「お隣さんからいただきましたの。今年は豊作だったからたーんと持ってお行き、って。夕飯の味噌汁に使ったのですが、余ったので焼き芋にしたんです」
差し出された焼き芋を手に3人で並んで縁側に座る。
右にはA、左には千寿郎。
2人とも笑顔で顔に一点の曇りもない。
「わっしょい‼わっしょい‼」
「ふふ」
「兄上は相変わらずですね」
ずっと、こんな日常が続けば良い。
できれば、鬼もいない、家族が殺される心配もない、そんな人生を生きたい。
でもそんな日は、簡単には来ない。
だからそんな日を夢見て、刀を振るい続けるんだ。
だからきっとこれは…
「これは夢か」
口に出すのを躊躇ってしまうほどの事実だった。
Aが生きているのが夢、
千寿郎と笑顔で修行できるのが夢、
Aの中で小さな子が小さく小さく息づいているのも夢。
現実には無い、夢。
いや、いつかはあったかもしれなかった夢。
俺が守ることのできなかったものが、ここには詰まっている。
ずっとここにいたい。
幸せなんだ。
でも、
不幸なんだ。
この幸せは続かない。
俺が守れなかったせいで壊れてしまう。
「兄上?」
千寿郎が俺の顔を覗き込み、不安そうに眉を顰める。
「何故、泣いているのですか?」
泣いている?
俺が?
「もしかして、杏寿郎さんのお口に合いませんでした?」
これまた不安そうに俺を覗き込むAの目には、みっともない顔をして泣いている俺の姿が映った。
「そんなことはないっ。美味いぞ!」
「では、何故ですか?」
「………幸せだからだ…」
「幸せだから…?」
「この幸せが続かないことを誰よりも知っているからだ………‼」
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スノードロップ(プロフ) - ユリさん» 最後まで、お付き合い有難うございました!続きですね…!?頑張らせていただきます! (2019年12月11日 1時) (レス) id: 4bbeb34f3b (このIDを非表示/違反報告)
ユリ(プロフ) - 完結おめでとうございます。出来れば続きがみたいです (2019年12月11日 1時) (レス) id: ba2a71100d (このIDを非表示/違反報告)
スノードロップ(プロフ) - ツバサさん» とりあえず、話の流れと大まかな物語は書いているので、更新ペースを上げられれば、と思います!頑張らせていただきます! (2019年12月9日 7時) (レス) id: 4bbeb34f3b (このIDを非表示/違反報告)
ツバサ - この後の展開が気になり過ぎて待ちきれません。更新頑張ってください (2019年12月9日 4時) (レス) id: ba2a71100d (このIDを非表示/違反報告)
スノードロップ(プロフ) - サクラさん» 有難うございます(*^-゜)vThanks!更新ペースは、遅いですが、最後まで見てくれると嬉しいです! (2019年12月2日 7時) (レス) id: 4bbeb34f3b (このIDを非表示/違反報告)
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