いなくなった君の話【煉獄杏寿郎】

エピローグ ページ25

Noside









ある一人の男が書面に筆を走らせていた。

40半ばだろうか？

無精髭をはやし、紙には綺麗な文字達を整列させている。






実はこの男、先日兄が亡くなった。

老衰、だそうだ。

最後は、愛しの妻であった者の名前を譫言のように呟いていたらしい。





しかしその顔には笑顔が浮かんでいたという。







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昔々のお話です。

あるところにお互いを大変愛し合っている夫婦がおりました。

夫婦は、それはそれは仲睦まじく暮らしておりました。


しかし、妻の方が人を食らう鬼と化してしまったのです。

夫は大層困り果てました。

というのも、夫の仕事は、その鬼を狩るものだったからです。



鬼になり、自我を失いつつも、妻は夫を愛しておりました。

愛しているからこそ、妻は夫を騙し、自害という道を選択しました。




粒となり、消えた妻を夫は一晩中探しました。


ようやく見付けた物は、微かに温もりを残した血だらけの妻の着物だけでありました。




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もしも、この話に続きがあるならば、今度こそ幸せな道を歩んで欲しい。

そう思いながら、男は静かに書物を閉じた。

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