第10話 ページ11
煉獄杏寿郎side
真っ白な空間だった。
右も左も、ましてや上下すらわからないような目が痛くなるほど真っ白な…。
そんな中にポツンと立っている真っ赤なAだけが、重力の正しさを教えてくれているようであった。
俺は死んだのか…。
いい人生だったわけではない。
母上は、早いうちになくなり、妻と子供もなくした。
でも、その者に死んだ今、会えたと思うと、少しばかり喜んでいる自分がいることに俺は気付いた。
「A、真っ赤じゃないか…。早く手当てを…」
『何故です?』
伸ばした手は、激しく叩かれた
それは、拒絶を意味していた。
『何故貴方がここにいるのです?』
「死んでしまったからだ。俺は死んだ。上弦の参との戦いで鳩尾を貫かれ、左目は潰れ、内臓が傷ついた」
死んでしまって痛みなんて、ないはずなのに、体が疼く。
『駄目です。駄目なんです、貴方は…っ。死んではいけません』
俺を見つめるその目は、どこか悲しいものを感じさせているようであった。
『死なないで、下さい』
Aの声は震えている。
しかし、それに反し、凛としているようにも聞こえる。
『耳を澄ましてください。貴方を呼ぶ声が聞こえてきますから…』
俺は言われた通り、耳をすますが、何も聞こえない。
俺の表情でそれを察したのか、Aは眉を潜めた。
『聞こえなくても構いません。でも、お願いですから、どうか生きて下さい。貴方は、必要とされる人間なんです。まだ、こちら側の住人になるべきではないんですよ』
頑張ったさ、俺は。
そろそろ楽になりたい。
君の元へ行きたいんだ。
『駄目です、生きるんです。私と子供の分まで…3人分の寿命をしっかりと生きて下さい』
そんなのは無理だ。
君に会いたくて、触れたくて仕方がなかったんだ。
暖かい君の体温を感じたかった。
幸せを感じたかった。
『貴方がいなくなったら、千寿郎君は、お父上様は、どうするんですか』
突然出された2人の名前に俺の体は硬直する。
『2人は、貴方が帰ってくると信じて待っておられるんです』
『私は、私の死を貴方が悲しんでくれたことを知っています。………ですから、そんな貴方には分かるんじゃないですか?おいて行かれる者の気持ちが…』
真っ白な世界にポタリポタリと赤いシミができ始める。
Aの体から伝った血が白い世界に弧を描いて行くのである。
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スノードロップ(プロフ) - ユリさん» 最後まで、お付き合い有難うございました!続きですね…!?頑張らせていただきます! (2019年12月11日 1時) (レス) id: 4bbeb34f3b (このIDを非表示/違反報告)
ユリ(プロフ) - 完結おめでとうございます。出来れば続きがみたいです (2019年12月11日 1時) (レス) id: ba2a71100d (このIDを非表示/違反報告)
スノードロップ(プロフ) - ツバサさん» とりあえず、話の流れと大まかな物語は書いているので、更新ペースを上げられれば、と思います!頑張らせていただきます! (2019年12月9日 7時) (レス) id: 4bbeb34f3b (このIDを非表示/違反報告)
ツバサ - この後の展開が気になり過ぎて待ちきれません。更新頑張ってください (2019年12月9日 4時) (レス) id: ba2a71100d (このIDを非表示/違反報告)
スノードロップ(プロフ) - サクラさん» 有難うございます(*^-゜)vThanks!更新ペースは、遅いですが、最後まで見てくれると嬉しいです! (2019年12月2日 7時) (レス) id: 4bbeb34f3b (このIDを非表示/違反報告)
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