うん、え、俺？

違う ページ30

「…何言ってるんですか笑」




柳田「んー？」




心なしか、距離が近い気がする



覗き込んでくる綺麗な顔に耐えきれず


ソファーから立ち上がる




柳田「どうしたの」



「いや、あ、テレビ、変えたいなって…」



リモコンを手に取って、ソファーの端に座る



全く意味のわからない情報番組を真剣な眼差しで見つめる



内容なんて全く耳に入らない。



「…」




決定的ではないけど、明らかにいつもと違う空気



自分が過剰反応しすぎなのか？


そうかもしれない、マサ先輩、元々距離感近い方だし




柳田「なんでそんな離れて座るの」




「え、そんなことないですよ、」




詰めてきた。



平常心、平常心、いつも通りだ





やっぱり意味のわからない情報番組からチャンネルを変えたくてまたリモコンを手に取ると



ひょいと取り上げられて、電源が落とされた






シーンとする部屋




あ、これ、私の勘違いとかじゃないみたい



この空気は、明らかにおかしい






柳田「…俺のこと嫌い？」




「マサ先輩、今日はどうしたんですか笑」





私の頬に触れた手を、軽く受け流す





柳田「…もし、関田がいなかったら、」




「…？」




柳田「関田が、セッターじゃなかったら」





柳田「俺のこと好きになってくれてた？」




「…え、？」





柳田「…」





無言で、目が合う時間





たしかに、初めに関田先輩が目についた理由はセッターだから。すごく上手だったから



上手なのは全員だけど



私自身がセッターだから、同じセッターの彼に注目した



関田先輩がセッターじゃなかったら？




私の印象に残ったのはエースのマサ先輩だろうけど



今は、関田先輩の全部が好きだ、バレーが上手でかっこいいだけじゃなくて


落ち着いた性格も、笑い方も、仕草とか声とかも




セッターじゃなかったら、出会えてなかったかもしれないけど



何かのきっかけで出会ってたら、好きになってたと思う




今更、なんとでも言えるけど





「…」




柳田「Aちゃんが関田のこと好きって分かってて言うのは卑怯だと思うけど」





柳田「俺も、Aちゃんのことが好き」




柳田「隠し通すつもりだった、関田とAちゃんはお似合いだと思うし、俺が好きだって言ったら、Aちゃんに気を遣わせるだろうってこともわかってたから」



柳田「でも、好きだよ」




彼の端正な顔が、ゆっくり



近付いて来た。

気の所為。→←雲行き怪しい

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す