いってらっしゃい、またあとで

40.ヒーロー ページ42

西田side




西田「いやぁ疲れたっすね〜」




石川「有志が最後にハードな自主練持ち込んできたからだろ」




久原「危うく右手取れるとこやったわ」







いつも通りの他愛ない会話をして家路を辿る




コンビニに寄ってから家に帰ると、なにやら不穏な空気が。








西田「…A」





Aがいない。




まさか、






柳田「明日、病院連れて行く。」






西田「…今は部屋っすか？」





柳田「うん、もう寝てるけど。」






俺たちが自主練している間に、この家で起こったこと



全部太志さんが教えてくれた。







あぁ、もう、何してんだ俺。





Aは、昔から溜め込みやすいタイプだった



悩みも、辛いことも全部




だからせめて俺だけにでも話してよと

中学生ながらに、一生Aを支えると決意してカッコつけて言ったんだ



「有志は、私のヒーローなんだ」




そう言ってくれた日の事は、鮮明に覚えてる

今より幼い声も、その時居たコンビニも、そこで買ったアイスの名前も値段も。




ヒーローになるって誓ったんだ




なのに、今


悔しくて拳を握りしめる事しか出来ないでいる




気付いてた、Aの違和感



何度か声をかけたけど、大丈夫だよと笑う彼女に

練習が忙しい日々

心のどこかで


まだ大丈夫だ、今は忙しいし落ち着いたら話そうと
後回しにしてしまっていた





そして今日、帰ってきたら話してみようと思って


コンビニで買ってきたAの好きなアイス




あの日と同じアイスは、パッケージが変わってしまってるけれど



これを食べながらだったら、少しでも話してくれるかななんて考えてたんだ





A以外揃ってるってのに、誰も居ないみたいに静かな部屋。




じんわりと溶けてきたアイスを、やや乱暴に冷凍庫に入れた。







石川「…有志」



頬に流れた涙、俺の肩に置かれた祐希さんの手



西田「…」




石川「自分を責めるなよ」




西田「自分以外、誰を責めるって言うんですか」




石川「誰も責めないでいい、こうなるまで助けられなかったのはお前だけの責任じゃないから」




西田「…」






関さんに背中を押されて、Aの部屋へ。





久々に入った部屋




棚の上に置かれた写真立てには高校の体育祭の時の写真や中学の入学式の写真、お互い全日本に選ばれた時の写真



ずっと変わらない笑顔で並ぶ自分たちの写真を見て



また涙が溢れ出した。

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