いってらっしゃい、またあとで

39.幻聴 ページ41

Aside




静かな部屋で、ベッドに横になる




太志さんに触れられた頬が熱く感じる。






「…」






もしもあのまま、太志さんがやめなかったら


キス…してたんだろうか






あの時、ただ頭の中には



曖昧な記憶がふわふわと浮かんでいた




靄がかかったみたいな視界に、ぼんやりと浮かぶ太志さんの顔




だけど、時々ふと頭に浮かぶ関田さんの顔



同じような距離で



驚いたような、困ったような



私が見たことないはずの表情。






ただの妄想なのか、現実なのか


思い出せそうで思い出せないモヤモヤが喉に詰まって苦しい、吐き出したい。






ｺﾝｺﾝ






「…はい」





ｶﾞﾁｬｯ






柳田「…大丈夫？」




「…マサさん、っ」




この息苦しさは、涙を堪えている時の感覚

扉を開けて顔を覗かせた彼を見た途端、止まっていた涙が一気に溢れ出す。




柳田「！」




手に持っていたおぼんを机に置いて駆け寄ってくる





そう、1秒でも早くこっちへ来て




今、この苦しさをぶつけられるのは貴方しかいないから。





柳田「もう大丈夫だから、1人にしてごめんな」




控えめに私の手を握る彼の胸に飛び込む。





柳田「…どうした？」





「私…あの日、何した、？」






「……キス、した？」




柳田「…した。」









柳田「…思い出したんだ」






「マサさん、私ね…関田さんのこと、」





柳田「わかってるよ」





柳田「好きなんでしょ」






「…」






柳田「…何かあったか、他の誰かと」


　

「…」


柳田「誰にも言わないから、苦しかったら全部吐け」



「…太志さんが、さっき」





何か言おうとして、黙り込んで


キスする直前で固まったの


私の顔を見つめて、切なそうな顔をしてた




ぽつぽつと、さっきあった事を話す。






柳田「…そっか」





柳田「Aの事好きなんだよ、太志も」




「…」



柳田「太志の事が気がかりなんだな」






柳田「でもAは、揺らがないんでしょ？」






柳田「Aの中で関田が1番なら、悩む必要も誤魔化す必要もないよ」





悩まれると、太志も吹っ切れないしな

と、溜息混じりに呟く。




柳田「…待って、寝た？」




なんとなく返事出来なくて、寝たふり。





諦めて私を寝かせて布団をかける







柳田「…太志だけじゃないよ。俺も好きだったよ、本気で」




去り際に残したセリフは



私の幻聴だって事にした。

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