引退した牛島君と私。 (ページ10)

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ｷｭｯ、ﾄﾞﾝ!!!

『ﾎﾞｿｯ綺麗なフォーム』

いつだってそうだ、どれだけ苦しい戦いの時だって牛島君のフォームが崩れることはない、それは彼の並みならぬ努力の賜物だ

「Aちゃん……Aちゃん！」

『っっえ、ぁ天童君』

「どーしたの、ボッーとしちゃって？」

声をかけられていたようだったが気が付かなかった、覗き込むように天童君が顔を見てくる

『ううん、何でもないよ、ごめんね』

「……ふーん、ならいいけどさ！」

くるっと翻した天童君はコートで100本サーブをしている牛島君を見る、天童君はジャンプサーブではないから早く終わったようだ

「…………Aちゃんはさ、これからどーすんの？」

『えっ、私？』

「うん、俺は高校でバレーはやめるけどさ！Aちゃんはこれからもバレーに関わっていくの？」

『……私は』

私はこれからどうするのだろう？
この3年間はバレー部のことばかりで、自分のことを考えたことがなかった、自分が3年生である自覚をしたのもこの春高が始まってからなのだ
そもそもマネージャーになったのも、牛島君に誘われたからで……

「……俺さ、Aちゃんには感謝してるんだよ」

『？』

「あはは、何でって顔だね……けど本当にさ、Aちゃんが俺らのマネで良かったと思ってるよ」

「俺の楽園は白鳥沢で、そこの大エース様と可愛いマネちゃんと一緒にバレー出来たこと、一生の思い出だからさ」

「3年間ありがとうねAちゃん」

『……天童君』

ポンポンと頭を撫でられ、天童君は皆も元へ走っていった
見慣れたその背中を見て、また涙が溢れそうになった