引退した牛島君と私。 (ページ11)

今日:7 hit、昨日:11 hit、合計:18,363 hit

9 ページ11

次々に100本サーブが終わっていき、それぞれが帰る準備を始めていた
元マネージャーであるAがすることはもうない、それでも、まだ名残惜しさが残るコートを見ていたかった

「A」

『う、しじまくん』

「もう帰るのか？」

『……うん』

コートを見ていた私の目の前に牛島君が現れた
試合後のあの出来事以来、始めての会話だ
片付けをしながらも、部員たちが聞き耳をたてているのが分かる

「……俺は、よく言葉が足りないと言われる」

「だが、嘘をついたことはない」

「お前のことが大切なのは本当だ」

「それは今も昔も変わらない」

「A」

「今日まで本当にありがとう」

「「「！？！？！？」」」

皆が牛島君の顔を見て驚いているのが分かる
私だって、驚いている、だって、こんなにも

『……牛島君って笑えたんだね』

「失礼だな、俺だって笑う」

『その顔、牛島君のファンに見せたら喜ぶよ』

「？それは無理だ」

『え、どうして？』

「俺は……お前の前でしか、表情筋が緩まない」

『表情筋って……』

いや、それよりもだ
私の前でしか表情筋緩まないってどういうこと？
そもそもこんなにも優しく微笑む牛島君を始めてみた、やっぱりカッコいいなぁ

私は左手を出し、牛島君に握手を求めた

「A？」

『牛島君、お礼を言うのは私の方だよ』

『私をこの世界に』

『白鳥沢バレー部の一員にしてくれてありがとう』

ずっと伝えたかった感謝の気持ちを
とびっきりの笑顔と一緒に