標的203 「きれいさっぱり忘れて行く」 ページ11
さて、ベルのおバカはサボった件でスクアーロに怒られ(でも全く堪えてなかった。本人曰く「だってオレ、王子だもん」だそうだ)、報告書も書き終わった俺はとある用事を思い出してボスの部屋に突撃した。
『ボスーーーーー!!』
「喧しい」
『あっ!今日もカッコいい!!!』
「………耳がいてぇ」
右耳を押さえながら眉間に皺を寄せるボスがなんだかおもしろくて笑えば今度こそ睨まれた。だけどそれだけ。これは相当寛大な処置だろう。誰と比べてって言われるとスクアーロくらいしか比較対象がいないけど。
そういえばベルも結構ボスに許されている。なんだ、子供が好きなのかボス。控え目に言って可愛いぞ。
「可愛いとか気色の悪い事言ってんじゃねえ」
『え、口から出てました?』
「あぁ」
『死にたい』
「困るからやめろ」
『止めてくれるボス優しい大好き』
「うるせぇ。さっさと来た理由を言えドカス」
『…………ボス大変です。忘れました』
本気で忘れてしまって口角をひくつかせる俺に呆れたようにため息をついたザンザスは「ん」とソファを顎で指し示す。「あざっす!」とふかふかのソファに腰を降ろせばボスは黙って書類をめくり始めた。
こんな感じで俺が突撃しても追い返すことはなく居座ることを許可してくれるボスは本当に甘い。ゲロ甘だ。俺も調子に乗りすぎだが何といってもボスは大好きなので「ではお言葉に甘えてひゃっほーい」となる。シカタナイネ。
「………いい加減慣れたか?」
『はい。みんないい人ですし。ボスはカッコいいし』
「世辞はいい」
『お世辞ゼロパーセントの本音なんですけど』
「………」
なにも返さないボスをちらりと見れば書類をめくる手が止まっている。ついでに文章を追っていた目線も止まってしまっている。
あ、またやっちゃった………そっと立ち上がってボスの隣に移動するも目線を向けてくれることはない。まあ、もう何度目とわかんないから焦らないけど。
ボスの右頬に手を添えて炎を灯す。ちらりと目線だけでボスがこちらを見た。
『ねえボス』
「………」
『日本では約束破らない男ってモテるんですよ』
「………興味ねえ」
『え、仮にも俺の生まれた国』
ワザと傷ついたリアクションを取れば小馬鹿にするように鼻を鳴らされてホッとする。
きっとボスは何か傷がある。……って、知ってるけど………知ってるけど、知らないフリをする。
きっとボスは俺が知ってることも知ってるだろうけど。なんだこれ混乱するな。
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りお(プロフ) - こんばんは、いきなりのごめんと失礼致します!とっても面白かったです、作者様のこの作品を見つけて一気読みしてしまいました!こんな素敵な作品ありがとうございます。次の更新も楽しみにしております! (2021年6月30日 23時) (レス) id: 02a06a9e06 (このIDを非表示/違反報告)
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