第一章 月は満ち欠けを繰り返し、光の色へと染まりゆく

標的44　「裸足で行く」 ページ46

「あ〜走りたくない〜」
「きつくなったらやめればいいんだから、頑張ろう」

既に疲れてる花ちゃんと、彼女のテンションを上げようと頑張る京子ちゃん。
その横で熾烈な戦いを繰り広げているのは、何を隠そう俺と仕事しない風紀委員長。

『走らなくていいってマジで。帰って仕事しろよ』
「君に指図される筋合いはないよ」
『じゃあ分かった、こうしよう。走っていいから、俺の横で走るな』
「無理。君の隣以外じんましんができる」
『どんなわがまま！？つーかどんなアレルギー！？』

事の発端はついさっき。
Bチーム準備しろ〜と言われてスタートのラインに立ったら、横に恭弥も立った。
しかも裸足。理由はまぁ…俺がシューズ借りてるからだけどさ。
その上、Bチームの男子が急にトイレに行きたくなったらしく駆けて行った。
今はそいつ待ち。その時間に喧嘩中ってわけだ。

「ヒバリさんは相変わらず怖いけど、Aちゃんも怖くなってきた」
「そうか？」
「確かに、肝っ玉デカいっすよね」

外野が何か言ってるけど気にしない。
自分たちの問題が先です。

『大体、なんで走るの！？お前なら125くらい余裕だろ！』
「当たり前でしょ」
『なら走る必要性は？』
「君より多く走りたいだけだけ」
『俺88本でやめるって』
「なら僕は89回走るよ」
『………俺が89走ったら？』
「90走る」
『……………そこまで言われたら引けないよな』
「やっとその気になった？」

あーくそ、やっぱり乗せようとしてやがったか。
ホイホイ乗ってしまった俺も悪いけどね。
もうどうにでもなりやがれ！！

『俺も裸足で走る。条件は一緒ね』
「勝った方は負けた方に一つ命令」
『乗った』

その時、例の男子がトイレから戻ってきた模様。
先生が音の準備を始める。ああ、適当にやるつもりが……とんだ災難だな。
俺も負けん気が強いから仕方ない。

「じゃあ始めるぞ！！一人飛び入り参加がいるみたいだが、皆頑張れよ！」

お前の事じゃねェかと恭弥を見ると、だから何？って顔を返された。
嫌味すら効果無しですか……強いな。
スタート！という先生の声と同時に、何回も聞いた音が流れ出した。




只今四十回。
俺の左横は恭弥だが、右横は京子ちゃん、その奥が花ちゃんだ。
既に花ちゃんは死にかけているし、京子ちゃんもきつそう。
とか思ってたら花ちゃんがギブアップ。
五十回超えたところで京子ちゃんも走るのをやめてしまった。

『まぁ女の子は仕方ないね』
「君は別枠だよ」
『何気に恭弥が酷い！！』

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