第一章 月は満ち欠けを繰り返し、光の色へと染まりゆく

標的41　「スタートラインに行く」 ページ43

え〜、今からかけっこ大会です。
負けたら一人シャトルラン。絶対嫌だ。
山本や獄寺が一位になる確率はほぼないだろう。だって恭弥速すぎる。
ああ、勿論ツナは論外で。
俺が全力出さなきゃなのか……と肩を落としていると、他のメンツがスタートラインに並び始めた。
そんな俺らの騒ぎを聞いてか、ぞろぞろとギャラリーが集まる。

「ねえ、A」
『なに？』

本気だしたらまずいかな〜と思っていると、横から恭弥に声を掛けられた。
ゴールの方で京子ちゃんが準備OKを告げている。
緊張で心臓がおかしくなってる。あれ？俺ってあがり症？

「全力で走りなよ。二位以外は許さない」
『……はいはい』
「一位は僕。安心してサボる準備してて」
『それはちょっと』
「冗談だよ」

恭弥の冗談でした発言に目を丸くしていると、前を向きなと注意される。
いや、お前のせいだからね。
花ちゃんが赤の旗を上に上げる。声と同時にあの旗が下がったらスタートだ。
仕方ない、正体がばれる手前までの本気はだしますか。

「いくよ？位置について、よーい――」

ちらりと恭弥を見る、彼は前を向いていた。
何故かそれに安心して、緊張が解けた。

「どんッ！！」

地面を蹴る。
今まで生きてきた中で、飛び出しは一番早かった。




京子ちゃんの横を走り抜けた。
止めていた息を吐き出しながらゆっくりとスピードを落とす。
さて、結果はどうでしょう。

「えっと……ごめんなさい！雲雀さんとAちゃん、同時だったの！！」

らしいです。
結構本気で走ったのにな〜……恭弥の脚の速さおかしいんだけど。
しかも息が上がっていないのを見ると、まだまだ余裕ってとこらしい。
あの人化け物ですね。とかいう俺も平然としてるから化け物か！

「ねぇ、同時ってどういうこと？ちゃんと見てなかったでしょ？咬み殺すよ」
『はいはいストーップ！！女の子に手を出したらダメですからね〜はいどうどうどう』
「邪魔しないで」
『いや邪魔するから。全力で邪魔するから。手を上げるのは俺だけにしときなさい。頑丈だから』
「それもそうだね」
『あでっ！叩くなっての！！』

早速頭に一撃。
もう俺の毛根全滅するんじゃない？
ていうか忘れてたけど……

「は、はやすぎなのな」
「ちょ、Aちゃん、さっきのタイム嘘でしょ」
「十代目、やっぱ、り、あいつ、女、じゃないん、すよ」
『恭弥、トンファーかして。こいつ殺す』
「僕が殺ってあげる」

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