検索窓
今日:8 hit、昨日:4 hit、合計:244,627 hit

46.Atsuto side (6/5 こちらのページからご覧下さい。続きのお話を追記しております。) ページ46

篤「俺がちゃんと言うから。


お前のお母さんは、この手でお前を守ったすげー人なんだって。俺がちゃんとこいつに言うから」






震えている彼女の右手に手を伸ばす。

あまりに痛々しい傷痕に一瞬触れるのを躊躇ったけれど、ゆっくり、そっと、其の傷跡をなぞった






篤「何が出来るかわかんねーけど、何も出来ねーかもしんないけど、

俺が居るから。こいつが居るから。



だからもう、何も心配しなくていい。

大丈夫。大丈夫。」






もう彼女のものではなくなってしまったと思っていた右手は、ちゃんと規則正しい脈を打っていて。確かにちゃんと温かくて。






篤「大丈夫」






強くて、優しい、俺の大好きな音を奏でる、あの手の温もりのままだった。






篤「ありがとう、A」






俺たちの宝物を守ってくれて、ありがとう。






篤「…ごめん」






貴女の夢を奪ってしまって、ごめん。






口下手な俺にはこんな陳腐な言葉しか思いつかないけれど、ようやく伝えられたような気がした。

あの日からずっと言えずにいた、ありったけの想いを。






篤「ありがとう」






震えている彼女の右手を強く優しく握り締める。

その瞬間に彼女の目尻から、幾つもの涙が溢れ出た。






篤「ありがとう、A。

……ごめん。…ありがとう。ありがとう」






彼女は声を上げて泣いた。

つられて俺も、泣いた。






今宵だけは絶望を叫んでもいいだろう






外は横殴りの雨。

窓硝子に当たる雨粒の音が、俺たちの哀しみを掻き消してくれるからーー









.

.

.









ーー「リクエストはありますか?」

『きらきら星!僕ね、あの曲がいちばん好き!』






真っ白なソファの定位置に腰掛け、

膝の上には小さな宝物を乗せて。






「あれ?フレデリックさんがいちばんじゃなかったの?」

『いちばんだよ!でもね、でもね、きらきら星はとくべつー!』






リビングの真ん中のグランドピアノには、

誰よりも輝くピアニスト。






「今日は上手に弾けるかな」






此処は何処なのだろうか。

空気も景色も、何もかもが違う世界。






『お父さんも!』






催促されるままに拍手を贈れば、彼女は綺麗な顔をくしゃくしゃにして笑って見せた。






『きらきら光る お空の星よ〜』






幼い歌声が、彼女の音楽に重なり合う。






此処は何処なのだろうか。

明るく、希望に満ちた、愛しすぎる程の音色に溢れた世界ーー

47.Atsuto side→←45.Atsuto side



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.9/10 (355 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
793人がお気に入り
設定タグ:内田篤人 , 日本代表
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

ぶたさんなの。(プロフ) - 昨日、今日と2日間かけて一気読みしました笑とても素敵な作品で浮気疑惑のところはやられたーって思ったりピアノの話になるたび私も練習しないとと思わされます笑 この作品は私の中で大好きな作品の1つになりました。 (2015年7月31日 23時) (レス) id: fb6db84d89 (このIDを非表示/違反報告)
おりん(プロフ) - laizさん、返信ありがとうございました!!ヒロインと内田さんの楽しそうな笑い声が聞こえてきそうなシーン…嬉しいな〜!幸せそうな二人を見れて一安心…ここでスカルのベビー服!?内田さんもイカついの着てましたね!思い出して笑っちゃいましたよー(笑) (2015年6月16日 1時) (レス) id: 865a51165f (このIDを非表示/違反報告)
aquayu(プロフ) - 更新楽しみにしていました!希望の光が見えた瞬間、涙がとまらなくなったのは、私だけでしょうか?この作品、本当に本当に大好きです。 (2015年6月5日 22時) (レス) id: ff637bb026 (このIDを非表示/違反報告)
laiz(プロフ) - おりんさん» 絶望の涙で泣き明かした夜だけど、この先に光が待っていそうな涙ですよね。思いっきり泣いて、何かが浄化してくれたらいいな。ちょっと足踏みしていた二人の背中を、「しっかりしてよ」と押してくれたのかもしれませんね^^そうそう、先程メッセージを送信しましたよ〜♪ (2015年6月5日 21時) (レス) id: 4d225c15a4 (このIDを非表示/違反報告)
laiz(プロフ) - すみれさん» 「大好き」のお言葉、動揺していた心に染み渡りました^^ありがとうございました。少し迷っていましたが、ようやく希望の光がさしてきた二人の世界、これからも変わらず執筆を続けていこうと思います。二人の、いや、三人の明るい未来、見守ってあげて下さい^^ (2015年6月5日 21時) (レス) id: 4d225c15a4 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:laiz | 作成日時:2015年2月7日 20時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。