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25.Atsuto side ページ25

昼食の後片付けを買って出ても、皿を拭くことさえままならない。

洗濯物を畳んでも、カルラが全てを終える頃に畳めたのはたったの一枚だけ。



何一つ上手く出来ない自分を、彼女やはり嘲るように笑って見せて。

それからは手際良く家事をこなしてゆくカルラを、ソファに座りただぼんやりと眺めていた。






篤「風呂入ってきなよ。久々に歩いて疲れたっしょ」






時刻は20時、

彼女は今日一度も、ピアノの部屋に行きたいと言うことはなかった。



どんなに忙しくても、どんなに体調が悪くても、其の弦を鳴らすことだけは一度だって欠かすことのなかった彼女が、あの部屋に行かないなんて初めてのことで。






「時間かかっちゃうかもしれない。篤人くん先に入って?」

篤「いいから、ゆっくり入ってこいって」






でもピアノ椅子に座っている彼女を目の前にしたら、俺はきっと其の場から逃げ出したくなってしまうから、そう言われなかったことに少し安心した。






21時30分、

いつもは一時間もかからずに風呂から上がってくるはずの彼女だが、気がつけばもうすぐ一時間半が経とうとしている。



きっと体や頭を洗うのにも手こずっているのだろう。

焦らずにこのまま待っていた方が良いのかとも思ったが、心配になりバスルームの扉をノックした。






「あっ…、」






返事が聞こえずにそっと扉を開ければ、髪の毛を濡 らしたまま脱衣所に立っていた彼女。

俺から恥ずかしそうに視線を外すと、顔を俯け小さな声で呟く。






「…篤人くん、手伝ってもらってもいい?」






彼女が左手でキュッと握り締めていたのは、パジャマの小さなボタンだった。






篤「…貸してみ」






はだけた其れから、白い肌が覗く。






篤「ん。後ろ向いて。ドライヤーもやるから」






濡れたままの彼女の髪は、もうすっかり冷たくなってしまっていた。

毛先から滴り落ちる雫のせいで、パジャマの肩の部分は湿っている。






篤「…何かあったらすぐ呼べよ。手伝うから」






鏡に映る彼女は、やはり情けないとでもいうような恥じらいの表情を浮かべていた。






「…うん。ありがとう」






少し震えた声は何故だが、ごめんと謝っているようにも、俺を責めているようにも聞こえた。

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ぶたさんなの。(プロフ) - 昨日、今日と2日間かけて一気読みしました笑とても素敵な作品で浮気疑惑のところはやられたーって思ったりピアノの話になるたび私も練習しないとと思わされます笑 この作品は私の中で大好きな作品の1つになりました。 (2015年7月31日 23時) (レス) id: fb6db84d89 (このIDを非表示/違反報告)
おりん(プロフ) - laizさん、返信ありがとうございました!!ヒロインと内田さんの楽しそうな笑い声が聞こえてきそうなシーン…嬉しいな〜!幸せそうな二人を見れて一安心…ここでスカルのベビー服!?内田さんもイカついの着てましたね!思い出して笑っちゃいましたよー(笑) (2015年6月16日 1時) (レス) id: 865a51165f (このIDを非表示/違反報告)
aquayu(プロフ) - 更新楽しみにしていました!希望の光が見えた瞬間、涙がとまらなくなったのは、私だけでしょうか?この作品、本当に本当に大好きです。 (2015年6月5日 22時) (レス) id: ff637bb026 (このIDを非表示/違反報告)
laiz(プロフ) - おりんさん» 絶望の涙で泣き明かした夜だけど、この先に光が待っていそうな涙ですよね。思いっきり泣いて、何かが浄化してくれたらいいな。ちょっと足踏みしていた二人の背中を、「しっかりしてよ」と押してくれたのかもしれませんね^^そうそう、先程メッセージを送信しましたよ〜♪ (2015年6月5日 21時) (レス) id: 4d225c15a4 (このIDを非表示/違反報告)
laiz(プロフ) - すみれさん» 「大好き」のお言葉、動揺していた心に染み渡りました^^ありがとうございました。少し迷っていましたが、ようやく希望の光がさしてきた二人の世界、これからも変わらず執筆を続けていこうと思います。二人の、いや、三人の明るい未来、見守ってあげて下さい^^ (2015年6月5日 21時) (レス) id: 4d225c15a4 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:laiz | 作成日時:2015年2月7日 20時

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