八百七十八話目 「目を覚ます」 ページ33
奴の表情を見た男が笑みを深くする。
「A、いい子だね。さぁ」
『うん……ねぇ、せんせい……ぎゅってして』
「ふふ……かわいいね、A」
「おいバカヤロウ！！目を覚ませ！！！」
今の体勢で抱きしめれば間違いなく奴の心臓を短剣が刺し貫くだろう。
無駄と分かっていても叫ばずにはいられない。男はニヤァと笑みを深くして手を奴の背中に回して…………
『ッ』
抱きしめた。
「…………え？」
『私と二人きりでランデブーするには言葉とムードが足りないんだけど』
嫌に冷静な声。
次の瞬間に男の身体を蹴飛ばして立ち上がった奴の胸は無傷だった。
いや、冷ややかな目で男を見下ろす奴の手には赤い血が点々と付着している。だが、それはどう見ても奴の血ではなく………。
「な、何故だ……確かにお前は」
『あぁ。うん。「俺」はね。しっかりダウンしちゃったけど。まだ「私」がいるんで。というかそれ即死のつもりでやったんだけど？はぁー、やっぱ「私」じゃまだまだね』
喋り方、雰囲気……奴とは違う女は男の胸に深々と突き刺さった短刀を躊躇いなく引き抜く。情けなく呻いた男を一瞥して俺の方に視線を向けた。が、「うげ」と呟いて視線をそらした。
「ヤバそうと思って出てきたけどそうでもなかったじゃん。あー、でも私が飛び起きるくらいにはやばいのか………え、お兄さん動けないの？」
ペラペラと独り言をつぶやいていると思えば突然質問を投げつけてくる。警戒しながらも頷けば「うわ〜、ガチもんの危機。ギリセーギリセー」などとのたまわっている。
「お、お前……なんで動ける！？」
胸から血を流しながらもそう喚く男に視線を落とした奴はニィと笑いながらしゃがんだ。しゃがんだ体勢のガラの悪さは変わらなくて、変なところは同じなんだなと妙な発見をする。
『俺はね、お前のことが怖いし嫌いだけど……私はお前にめちゃくちゃ会いたかったの』
「え？」
『そいつの真似っこをしたのが運の尽きってやつよね。……私はね、存在しない人格だったの。でもどっかのお節介が「俺」を護る為に、こういう事があってもいいように態々連れてきて……ううん、復元してくれた人格』
「ど、どういうことだ！？」
『私は、「歌龍Aが本当はなる筈だった人格」。当たり前に家族で暮らして、当たり前に友達と遊んで、当たり前にあの世界で生きて……そんな世界だったら存在した私』
ああ、ならそのお前もお前なのか。
まあ、俺は…………。
八百七十九話目 「邂逅」→←八百七十七話目 「 楽になる 」
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涙腺崩壊日本人 - 2章まってます！！！！！ (2022年9月9日 21時) (
レス) @page50 id: 66bf482254 (このIDを非表示/違反報告)
涙腺崩壊日本人 - ルッチさんの為なら、いや、更新のためなら天に召されても良い、、、、 (2022年8月18日 0時) (レス) id: 66bf482254 (このIDを非表示/違反報告)
涙腺崩壊日本人 - ルッチさん好き過ぎる作戦隊長さん、ありがとう感謝します私は貴方のおかげでルッチさんに目覚めることが出来ました！ワンピが帰ってくるのを待つぜ！更新お願いします！！超超超超超超超超超大好きです！ (2022年8月18日 0時) (レス) id: 66bf482254 (このIDを非表示/違反報告)
ルッチさぁぁぁん - ホントわかる、、ルッチさん好き (2022年5月11日 23時) (レス) @page44 id: 66bf482254 (このIDを非表示/違反報告)
狐竜(プロフ) - ぴゃ！！！？？（大混乱）やった久々の更新！！！ほんともうこのシリーズのルッチさん大好きなんですよ私……嬉しい…！！！ (2022年3月28日 21時) (レス) @page46 id: 2674e8aa46 (このIDを非表示/違反報告)
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