七百九十六話目 「深刻な布不足でして」 ページ48
別室に消えて行ったバカの声でクロコダイルも居なくなった部屋にて一人立っていること数分。煩いままの別室のドアが開いたと思えば、クロコダイルのみが出てきた。
何かしら騒ぐバカを無視してバタンと扉を閉めたクロコダイルはクツクツと笑っている。
「ああ、護衛君は座って寛いでいたまえ」
「……大将は」
「お嬢ちゃんはおめかしに忙しいらしいからな」
またもや笑うクロコダイルに眉根を寄せたものの、こちらの質問に真面目な答えを返す気はさらさらないようなので、訝しみつつもソファに腰を降ろした。
それから更に五分ほど経過して漸く、別室のドアが少し開いた。
『な、なぁ』
「なんだ？」
『羽織るものとかないっすかね？』
「ねえな」
『嘘つけマント貸せや！！』
「これは俺の衣装だ」
『俺の衣装は深刻な布不足なんだよ！！』
ドアをほんの少しだけ(目しか見えてない)開けて叫ぶバカヤロウに痺れを切らし、ソファから立ち上がった。それを見た奴が「げ、忘れてた！」なんて言いやがっている間に距離を詰め、ドアノブを引っ掴んでドアを完全に開けた。
奴も油断していたらしく、簡単に全開となったドアの向こうにいたのは確かにバカ一人。バカ一人ではあるのだが……
「何を馬鹿な格好を晒しているんですか？」
『……死にたい』
我ながらよく敬語で喋れたと思う、心底。
赤い髪にウサギ耳のついたカチューシャを着けた、いわゆるバニーガールの格好をしたバカヤロウが涙目になっている。足にはご丁寧に網タイツ。奴の言う通り、確かに深刻な布不足だ。
「……よく着ましたね」
『もういやだあああああああああ！！』
叫びながらベッドにダイブしてシーツに包まってしまった奴。背を向けた時に見えた白くて丸い尻尾に、どんなこだわりだ作った奴はと斜め上のツッコミを入れてしまったのは仕方ないといえよう。
というか、ここ客間だったんだな。もうどうでもいい事しか考えられない。
「おいA、隠れてんじゃねえよ」
俺の背後のドアを潜ってやってきたクロコダイルが笑いながら小さく震えるシーツの塊に声をかける。寒くて震えてるのか、小さく泣いてるのか判別できないが。
「おら、出てこい」
『無理だよ布よこせ』
「それは断る」
『人でなし！』
「じゃぁ顔だけでも出せ。な？」
クロコダイルが優しい声色で宥めながらシーツを右手で撫でれば唸りながらもそろそろと顔だけ出した。ああなっては基本出てこないということを知っているこちらからすれば驚きだ。
七百九十七話目 「パンダ……パンダ？」→←七百九十五話目 「ナニコレ珍百景」
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レン - 最後から6行目わざとなのか？ (2019年7月17日 18時) (
レス) id: dc4a31061c (このIDを非表示/違反報告)
佐原雛美 - いつも、楽しみにしてます！！突然で申し訳ないのですが、Twitterってやられてますか？ (2019年1月4日 1時) (レス) id: 0d00d7f289 (このIDを非表示/違反報告)
ルリ - とっても面白いです!!これからも更新頑張って下さい！待ってます。 (2019年1月1日 9時) (レス) id: 1b98bfe505 (このIDを非表示/違反報告)
Alice(プロフ) - 作戦隊長さんの優しさに甘えまたコメントを送らせていただきます！ 色気たっぷりのクロコダイルさんがめちゃくちゃ楽しそうにいじってくるのも、すっかり忘れられて不機嫌になってるルッチさんもすごく好きすぎてにやけます。これからもずっと応援してます！！ (2018年12月8日 15時) (レス) id: d52fef5ccc (このIDを非表示/違反報告)
イゾウRAVU - とっても面白いです!!これからも頑張ってください！更新待ってます！ (2018年12月5日 15時) (レス) id: 0e771d3d36 (このIDを非表示/違反報告)
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