七百五十六話目 「酔うと眠くなる」 ページ5
一時間ほどで飯は食い終わり、Aはデザートをつっついている。カシスオレンジが気に入ったのか、同じものを三杯飲み、レリィが勧めた別の酒も三杯ほど飲んでいた。あの女、勧めるときにこっちにウィンクなんてしやがったから、変な気を使われたんだと察したが……後で文句の一つも溢してやろう。
そう思うくらいには、Aは酔っている。ただ酔うというよりも、眠気が強いらしく、アイスを運ぶスプーンの動きが遅い。
「おい、大丈夫か？」
『んー……うん』
こっちの質問を理解するのに時間がかかっている時点で相当やばそうだが、変なテンションになる酔い方じゃなくてよかったとどこか安心する。
半分は喋りつかれているのもありそうだ。楽しげに移動先でのドタバタを語ってくれた。
まあ、俺は時折眉間に皺を寄せてしまっていたようで「どうした？」と何度も聞かれたが。
酔ったこいつはどうもビビりになるらしく、俺が少しでも表情を硬くすると目敏く聞いてくる。おかげで顔が筋肉痛になりそうだ。それに気づいてからなんだ眉間の皺を事前に止めたことだろう。
「余計なことを聞いた……」
のんびりゆっくり食うこいつがまだこうなる前に、ふと聞いてしまった。
「おい」
『ん？』
「さっきからルッチって奴の事ばかり喋るが、そんなに好きか」
『あ！？嫌いに決まってるだろ！』
「理由は？」
『………嫌いだから？』
少し逡巡したが、まっすぐこちらを見てきっぱり言った。
だが、モヤモヤと何かが残り、その場は「そうか」とだけ返して会話を切った。
カチン、とスプーンを置く音で我に返り、Aの方を見れば眠そうな目でこっちを見ていた。
「ん、食い終わったな」
『……うん。美味かった』
「そうか」
『……』
ついに船を漕ぎ始めてしまったAに苦笑していれば、個室のドアが開きレリィが顔を覗かせた。
「あちゃー……そうなったか」
「余計な気をまわしやがったせいでな」
「あはー、やっぱ手を出しちゃったわ」
笑顔を崩さず謝るレリィにため息を漏らすと、何を感じ取ったのかパチリとAが目を開けた。
『んあ、ごめ』
「何がだ？」
『寝てた……？』
「俺に聞くな」
立ち上がって頭をポンポンと叩いて「帰るぞ」と促すと、コクリと頷いてバッグを持った。
意外にもふらつかない足元に、少し驚きながらもささっと会計を済ませた。
「また来てね」
「余計なことをしねーならな」
「しないって！……Aちゃんもまたおいで」
「……あい」
七百五十七話目 「ちょっと違う」→←七百五十五話目 「留守番組の乾杯」
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レン - 最後から6行目わざとなのか？ (2019年7月17日 18時) (
レス) id: dc4a31061c (このIDを非表示/違反報告)
佐原雛美 - いつも、楽しみにしてます！！突然で申し訳ないのですが、Twitterってやられてますか？ (2019年1月4日 1時) (レス) id: 0d00d7f289 (このIDを非表示/違反報告)
ルリ - とっても面白いです!!これからも更新頑張って下さい！待ってます。 (2019年1月1日 9時) (レス) id: 1b98bfe505 (このIDを非表示/違反報告)
Alice(プロフ) - 作戦隊長さんの優しさに甘えまたコメントを送らせていただきます！ 色気たっぷりのクロコダイルさんがめちゃくちゃ楽しそうにいじってくるのも、すっかり忘れられて不機嫌になってるルッチさんもすごく好きすぎてにやけます。これからもずっと応援してます！！ (2018年12月8日 15時) (レス) id: d52fef5ccc (このIDを非表示/違反報告)
イゾウRAVU - とっても面白いです!!これからも頑張ってください！更新待ってます！ (2018年12月5日 15時) (レス) id: 0e771d3d36 (このIDを非表示/違反報告)
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