七百七十六話目 「それは一体何のため？」 ページ25
カハッ！と気道が閉まった時特有の音が、俺の口から洩れた。
何が起きたのかわからないまま、身体が後ろに傾き、先ほど布団を出したベッドへと沈んだ。勿論背中は痛くはないが、首が痛い、苦しい。
漸く周囲を見回した目が俺の脳内に与えた情報は、ルッチさん越しに見える天井、俺の首元に伸びる彼の右腕、眉間に皺を寄せ、不快感をあらわにする彼の表情だ。
『がぁ……かっ……！』
「………」
『る、ち……さっ』
ガシッと利き腕で俺の首を締めあげている片腕を掴み、剥がそうとしたが、酸欠と態勢のせいで力は入らない。ならばと右手はそのまま左手を動かそうとすればもう片方のルッチさんの手に阻まれた。
「関係ないだと？」
『ッ……な、に……』
「……お前はなんだ」
『お、……れ……』
苦しくて生理的な涙が湧いてくる。口端からは涎が垂れた。霞む視界の中でルッチさんの怒りと侮蔑と……何かが混じっている気がする、そんな顔が見えた。分からないのは酸欠のせいか、それとも……
「お前は！」
『がッッ！！』
ルッチさんの強い声と同時に彼の右腕にも力が入った。
辛うじて入ってきていた酸素が完全に遮断され、四肢が引き攣った。
意識が白に染まっていく感覚を覚えた時、スッと息を吸うことができた。
急に入ってきた酸素に体が驚き、せき込みながらも必死に空気を取り入れる。
『げほっ、がはっ！！かはっ！！はぁ……はぁ……』
「………」
呼吸を整える俺を無言で見つめていたルッチさんだったが、舌打ちを溢して外へ続くドアを潜って行った。
一方の俺はどうにかこうにか通常の呼吸まで戻して漸く、口端に垂れていた涎を乱雑に拭い、再びベッドに仰向けに転がった。
『死んだと思った』
若干どころかガッスガスの自分の声をどっかで馬鹿にしながら、ルッチさんが消えて行ったドアに目線をやった。
船外に出れば、淀んだ夜空が広がっていた。星は勿論のこと、月の明かりも雲に隠れ切ってしまって見えない。
見張りであろう海兵が一瞬こちらを見たが、すぐに身体ごと他所を向いた。普段なら気にしないようなことにも妙に神経を尖らせてしまう自分を認識して、眉間に皺が寄った。
「……チッ」
甲板まで出ると、先ほどとは別の見張りの海兵がいたが、何を思ったのか尻尾を巻いてどこかへと引っ込んだ。苛立ちながらも手摺に両腕を乗せ、外を眺める。真っ黒の海面が広がるだけだ。
ふと、視界に白いものが入ってきた。
「………雪か」
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レン - 最後から6行目わざとなのか？ (2019年7月17日 18時) (
レス) id: dc4a31061c (このIDを非表示/違反報告)
佐原雛美 - いつも、楽しみにしてます！！突然で申し訳ないのですが、Twitterってやられてますか？ (2019年1月4日 1時) (レス) id: 0d00d7f289 (このIDを非表示/違反報告)
ルリ - とっても面白いです!!これからも更新頑張って下さい！待ってます。 (2019年1月1日 9時) (レス) id: 1b98bfe505 (このIDを非表示/違反報告)
Alice(プロフ) - 作戦隊長さんの優しさに甘えまたコメントを送らせていただきます！ 色気たっぷりのクロコダイルさんがめちゃくちゃ楽しそうにいじってくるのも、すっかり忘れられて不機嫌になってるルッチさんもすごく好きすぎてにやけます。これからもずっと応援してます！！ (2018年12月8日 15時) (レス) id: d52fef5ccc (このIDを非表示/違反報告)
イゾウRAVU - とっても面白いです!!これからも頑張ってください！更新待ってます！ (2018年12月5日 15時) (レス) id: 0e771d3d36 (このIDを非表示/違反報告)
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