六百八十八話目 「さようなら、ごめんなさい」 ページ32
拳を受けて吹っ飛んだ奴は咳き込みながら立ち上がる。
頬を木の枝か何かで切ったらしく、血が流れていた。当の本人は傷口をなぞり血を確認しながらポツリと呟いている。
『注射器の中身はマジもんか……』
「よそ事を考えている場合ではないだろう？」
『かはっ！』
後ろに回り込んで蹴り飛ばす。今度はもろ鳩尾に入ったらしく、渇いた音を漏らして地面に転がった。うつぶせになっているバカを足で転がし、仰向けにさせる。
相当痛かったのか唇を噛みしめて俺を睨む。千切れたのであろういつかのネックレスが地に落ちた。
「いい顔だな。惨めだ」
『結構な、ご趣味ですね』
「ああ、最高に気分がいい」
『そうですね、裏切り者の俺が地面に転がってますもんね』
弱々しく笑いながら言う奴。
不愉快だったので腹に右足を乗せ、じわじわと体重を乗せていく。
注射器を握る奴の左手から見るからに力が抜けていく。
『がっ……あ、あぁ……』
「何を思ってあちらに加担するかは知らんが……どんな理由だろうと見逃すわけにはいかん」
『ぐっ！』
「……確か、ウイルスだったな。勿体ないから貴様に使ってやろうか？」
そう言った瞬間に奴が俺の足元から消えた。正しくは水のようになって抜け出したと言っていい。こんなことも出来たのか、迂闊だった。
少し距離を置いて立っている奴は苦虫を噛み潰したような顔をして左手を見た。
『……能力は使いたくなかったけど』
「？」
『ごめんなさい……waterlock』
謝りながら奴が手を前に出した瞬間、俺の身体が水に包まれる。
抜け出そうにも力が入らず、水の球体に閉じ込められた。
透明な水で揺れる視界の中で、奴が近寄ってくる。奴は水の中に自分の腕を突っ込むと俺の左腕を掴んだ。
そして奴のもう片手には注射器。チクリと小さい痛みで針が刺されたのだと知る。
『………さようなら、ルッチさん』
そう言った奴の目からは涙が流れていた。意味が解らない、お前は自分で選んで俺を殺すのだろうに、なぜそんな顔をする。意識が飛びそうな中、ゆっくりと膝をつくのはなぜか奴の身体で、不思議に思った時には俺の周りから水は消えていた。
『……うっ、きっつ』
呻きだした奴の手から空になった注射器が転げ落ちた。
今の今まで握っていて隠れていたのか、そこに見えたのはバツ印。
ならば、俺がさっき打たれたのは……。ゆっくりと奴に手を伸ばそうとした時、青い塊に吹っ飛ばされた。
「………いい加減、見てらんねえよい」
『…ま、るこ？』
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作戦隊長(プロフ) - うみうしさん» 一年越しに気づきました。そして見事に掲載し忘れてますね………どうしましょ(´・ω・｀) (2018年11月11日 14時) (
レス) id: 9eca42e73b (このIDを非表示/違反報告)
うみうし(プロフ) - 六百八十四話「え？」 (2018年11月10日 17時) (レス) id: 314bb7876c (このIDを非表示/違反報告)
作戦隊長(プロフ) - まとめてコメント返し失礼致しますm(*_ _)mありがとうございます、バイトでひぃひぃ言ってるので厳しいところもありますが、できるだけ返信していきたいと思います。今後ともよろしくお願いします！ (2017年9月11日 20時) (レス) id: 11460b30b2 (このIDを非表示/違反報告)
なな - あ、もちろん作戦隊長さんの作品大好きです！更新頑張ってください！ (2017年8月25日 12時) (レス) id: c3374e0373 (このIDを非表示/違反報告)
なな - 作戦隊長さん、前みたいに顔文字とかを入れたらもっと面白くなるんじゃないかと思ったのですが…どうでしょうか？？( ´・ω・` ) 時間がなかったりしたらすみません (2017年8月25日 12時) (レス) id: c3374e0373 (このIDを非表示/違反報告)
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