六百六十六話目 「悪魔が巣食う心」 ページ11
俺は人に愛される自信がない。皆無だ。
弱さを捨てるために女を捨てた俺が「女」として愛されることなんぞあり得ない。相手に失礼ともいえる。
それに…………俺の過去や能力をすべて伝えてなお愛される自信がないのだ。いや、愛してくれる人はいるかもしれないが、俺が一歩を踏み出せない。話すことができない。
ならば話さないまま愛されればいい話だが、それも難しい。相手に自分の最も弱くて脆いところを隠し続けるなど不可能だ。
よしんばこちらが可能だったとしても、相手の気持ちを考えればそれは不敬であろう。相手の愛という感情すべてを裏切る行為だ。
更に言えば、俺は怖いのだ。自分で話してつながりを失うことも、話したことによって誰かとのつながりが強制的に断たれることも。
俺の家族はみんな死んだ。その時の悲しみは、苦しみは、絶望は……まだ体が、心が覚えている。記憶を辿ればいとも容易くぶり返すそれには最近ようやく鍵をかけ、どこぞの部屋の中に閉じ込めることができたが……消えたわけではない。何かのきっかけで封印が解ければ、解き放たれたそれが大きく口を開けるだろう。
だからこそ………俺は愛することを恐れる。再びあの悪魔を鍵のかかった場所から解放すれば、二度と俺には戻れない。いや、前だって「私」は消えてしまった。俺はこれ以上自分を殺すことはできないだろう。三度目の自分はもういない。繰り返した苦しみは闇の中、次に悪魔が出てきたとき、その時には間違いなく死を選ぶだろう。
それでも………俺を愛したいと馬鹿を言う人が現れたのならば。誰かを愛したいと思う時が来たならば。
俺の本質を知ってすら笑って済ませる人が現れたのならば。自分の命すらも悪魔に捧げる気で愛したい人が現れたのならば………俺は喜んで悪魔のいる部屋の鍵を壊そう。文字通り、心を捧げよう。
愛する人が俺の心の悪魔を殺してくれることを祈って、俺は愛に溺れよう。
風が頬を撫でる。長い間考え事にふけっていたらしい俺は、背後から名前を呼ばれ振り返った。視界に入ったのは困ったように笑うカク。
「ま、さっきの告白は冗談じゃ」
『そうか』
「ああ、冗談じゃ………」
『…………』
暫く無言が続いたが、カクが笑って手を差し出した。
ああ、その笑顔に今は甘えよう。
「さ、帰るまでがデートじゃ！」
『………おう！』
六百六十七話目 「お礼の品」→←六百六十五話目 「冗談やめろよ」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 734人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
S��N、海賊の世界に飛んだ一般ピーポーは最強と言う肩書を持ってしまいました。 底辺歌い手として楽しんでいたはずだったのですが(真顔) 底辺歌い手として活動していましたが上を目指してみようと思います（白目）もっと見る
「ONEPIECE」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
作戦隊長(プロフ) - うみうしさん» 一年越しに気づきました。そして見事に掲載し忘れてますね………どうしましょ(´・ω・｀) (2018年11月11日 14時) (
レス) id: 9eca42e73b (このIDを非表示/違反報告)
うみうし(プロフ) - 六百八十四話「え？」 (2018年11月10日 17時) (レス) id: 314bb7876c (このIDを非表示/違反報告)
作戦隊長(プロフ) - まとめてコメント返し失礼致しますm(*_ _)mありがとうございます、バイトでひぃひぃ言ってるので厳しいところもありますが、できるだけ返信していきたいと思います。今後ともよろしくお願いします！ (2017年9月11日 20時) (レス) id: 11460b30b2 (このIDを非表示/違反報告)
なな - あ、もちろん作戦隊長さんの作品大好きです！更新頑張ってください！ (2017年8月25日 12時) (レス) id: c3374e0373 (このIDを非表示/違反報告)
なな - 作戦隊長さん、前みたいに顔文字とかを入れたらもっと面白くなるんじゃないかと思ったのですが…どうでしょうか？？( ´・ω・` ) 時間がなかったりしたらすみません (2017年8月25日 12時) (レス) id: c3374e0373 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
