SⅥN、海賊の世界に飛んだ一般ピーポーは最強と言う肩書を持ってしまいました。 (ページ10)

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五百二十話目　「心配無用でしたね」ページ10

相変わらずの無表情で立ってるのはルッチさん。
さっきの事もありとてもじゃないが顔を合わせにくい俺はカクの後ろに隠れる。
といっても座ってるカクの後ろに回り込む程度だが。

「ルッチ！お主ずるいぞ！！」
「なんの話だ！？」
「Aに脱がしてもらったんじゃろ！！」
「それがどうした」
「わしも脱がしてもらいたい！！」
「俺に言うなバカヤロウ」

ぺしっと頭をはたかれたカク。うん、ルッチさんド正論。
それで正気を取り戻したのかどうかは知らないが、そういえばと言葉を続けるカク。

「結局、Aになんの用事だったんじゃ？」
「……オイ」

とたんに不機嫌度が急上昇したらしいルッチさんは絶対零度の視線をこちらに投げ、俺を呼んだ。無意識下に軽く身構えてしまったのはばれていないはず。

『は、はい』
「血まみれの服を処分しておけ。捨ててくれて構わん」
『了解です……あの、部屋には』
「勝手に入れ」

これ以上は恐ろしくて無理です。
じゃあ、と軽く言ってからドアに向かって歩き出す。
しかし、聞いてなかったことを思い出し、怖いけど振り返って聞いてみた。

『あの……ルッチさん』
「…………」
『ホントに怪我とかしてな………いですよねスミマセン』

またもや睨まれたので退散です。
これ以上は命一個じゃ足りない。死んでしまいます。

睨むと奴は慌てたように部屋から出ていった。
ドアが閉まって気配が遠ざかっていくのを感じていれば、カクがおちゃらけるように言う。

「おお、怖いのう」
「……何が言いたい」
「そんなに睨んではまた給仕がいなくなるじゃろうが」
「ハッ、俺には関係ない事だ」
「わしには死活問題なんじゃがのう」

ジト目で見てくるカクを、もう一度鼻で笑ってあしらった。
給仕がいなくなったところで、問題ないというのは本当だった。
奴が来る前はメンバー専属の給仕の席は空いており、不特定の人間がその仕事を分担していた。名前も顔も覚えたためしはないが。
それは他のメンバーも同じようなもので、カクなんかは「いないもの」として見ていた節すらある。

「カク、お前にしては珍しく馴れ合ってるじゃねえか」
「ダメか？わしはAが気に入ったんじゃ。仕方なかろう」
「あんな得体のしれない奴をか？」
「それについてはわしらも同じじゃろう。Aから見たわしらはもっと怖いぞ」

得体のしれない殺人集団じゃ、と笑いながら言い切る同僚に、今度はこちらがジト目を送った。