SⅥN、海賊の世界に飛んだ一般ピーポーは最強と言う肩書を持ってしまいました。 (ページ43)

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五百五十三話目　「眠り姫の起床」ページ43

カクが何度目かの心配じゃーという叫びに、長官がだったら見てこいといった返しをしたところで、扉が開きルッチが入ってきた。なぜかハットリを連れていない。

「残りの報告書です」
「ご苦労。あとはAに確認とって終わりだな」
「……カク、なにか用か？」
「なんでもないが？」

昨日からカクはルッチに敵意むき出しで、今もガッツリ睨んでいる。ここまでコイツがキレるのも珍しい。まあ、今回はルッチが確実に悪いから当然なのだが。

「カク、やめとけ。化け猫は給仕に助けられてプライドが傷ついてんだろうぜ、そっとしといてやれ。ギャハハハハ！！」
「……」
「何も言い返せねえのか？珍しい事もあるもんだな」
「おーい喧嘩は外でやれよー、修理費が馬鹿にならねえからなー」

書類から顔を上げることもなく長官がやんわりと止める。
ルッチは表情すら変えていない。が、機嫌が悪いのは確かだ。雰囲気で分かる。

「貴様に言われる所以はないぞ野良犬」
「ンなことねえ。俺の暇つぶし相手が寝込んでる」
「ジャブラ！Aはわしのじゃ！！」
「どこに食いついてんだお前は」

カクの見当違いの横やりにツッコミを入れれば、机上の電伝虫が鳴った。
長官が受話器を上げ応答する。そしてすぐに「本当か！？」と喜色を浮かべた。
その後もいくらか相槌を打って通話を終えた長官。主にカクのほうを向いて報告した。

「Aが目を覚ましたとよ！」
「ホントか！？ホントか長官！！」
「一日寝ただけで済んだか……心配かけやがって」
「………そのまま眠り続ければよかったのにな」

最後の言葉に全員がそいつを睨んだ。誰と問うまでもない、ルッチだ。
真っ先にルッチに殴りかかろうとしたカクの首根っこを掴んで止める。

「離さんかジャブラ！流石のわしでももう我慢ならんわい！！」
「……お前だけじゃねえよ」

掴んでいた手を離す。大人しくなったカクとは対照的に、俺のイライラは最高潮。
バキバキっと手を鳴らしながらルッチを睨みつける。

「おいルッチ、外行くぞ」
「そろいもそろって……あの女は部外者だ。死んだって構わんだろう」
「お前はそれでいいだろうぜ。何言っても無駄だろうからな」
「ならばお前がキレる必要は無い筈だ」
「御託はいい、お前をぶっ飛ばせば済む話だ」

暫くにらみ合った後、俺とルッチは窓ガラスを破って外に出る。
俺の去った部屋から二人の声が聞こえた。

「止めんでいいのか？」
「止めるわきゃねーだろ。お前もジャブラに加勢してこい」