SⅥN、海賊の世界に飛んだ一般ピーポーは最強と言う肩書を持ってしまいました。 (ページ36)

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五百四十六話目　「緊急事態発生」ページ36

そうだった、と思い出してその場で声をはる。

「あー、お前ら真っ直ぐ長官室にこい」
「だそうじゃが？」
〈了解〉

伝わったようでホッとする。
受話器の向こうが特に騒がしいわけでもなかったので、任務は滞りなく終わったのだろう。
取りあえず、奴らが来たら青雉殿に連絡入れて、無事でしたと報告すっかな。

「長官、ちょっとわし出迎えにいってくる！」
「勝手に行ってろ」

俺の言葉を待たずに飛び出していくならもう聞かなくてもよくねえか？
零れそこなって少し温くなったコーヒーを飲み干す。そんなに美味くねえな。

船着き場に到着した時に、船も同時に錨をおろしていた。
間もなくハットリを肩に乗せたルッチが降りてくる。

「お疲れさまじゃ。今回は珍しく怪我しとるのう」
「………」
「右足は重症じゃな。明日は槍が降るか？」
「………やかましいぞカク」

おお、これは怖い。不機嫌オーラ丸出しじゃ。
話題を変えようとしたが、当たり前ならルッチより先に飛び出してきそうなAの姿が見えない。

「Aはどうしたんじゃ？」
「……中だ」
「寝とるのか？……っておいルッチ、どこいくんじゃ！？」

スタスタと本島に向けて歩き出すルッチを呼び止めるが、聞く耳は持たないようだ。
これは喧嘩したか、あるいはAが任務の邪魔でもしたかのうとため息をついて船の中に足を踏み入れた。

「Aー、長官が待っとるからはよう……」

船室に踏み入れ言葉を失った。
ソファにうつ伏せで転がっているのはA。
背中には包帯が巻かれているが、未だに血がにじんでおり深手を負っていることがわかる。
寝ているようだが息が荒い。頬や手が赤い。熱まであるか？
慌てて船室に置き去りにされていた電伝虫を長官室に繋ぐ。

「長官か！？」
〈んあ？どうしたんだ？〉
「ジャブラかブルーノおるじゃろう！？すぐ船着き場に来るよう言っとくれ！！Aが！！」
〈はァ！？Aになんかあったのかァ！！？おいジャブラ！ジャブラあぁぁぁああ！！〉

ぶつっと通話が切れた。
恐らく部屋の前をジャブラが通りでもしたのだろう。あやつの事なら三分もかかるまい。
もう一度意識の無いAに視線を落とす。あれだけ大声で通話しても全く目を開く気配はない。身じろぎもしない。
ただ苦しそうに眉を寄せて荒い息を繰り返している。

「おぬし……一体なにをしでかしたんじゃ」