SⅥN、海賊の世界に飛んだ一般ピーポーは最強と言う肩書を持ってしまいました。 (ページ21)

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五百三十一話目　「手を洗わせてください」ページ21

上を見れば確かに窓がある。
そして先刻言ったように、窓は空いていた。ついでに人の顔もあった。目も合った。
要は覗かれている。タイミングよかったと安堵すべきなのか、現在進行形で覗かれてることに対してキャーなりいやーんなり叫ぶべきか。

『………えっと』
「終わった？」
『あ、はい残念ながら』
「それは残念……もう一回する予定は？」
『今のところは……』
「そう……」
『なんかすみません』

そこまで言ったところで壁の向こうから「お前何やってんだよ！！」という声。
続いて同じ声で「すまねえこいつバカだから」っていう謝罪。
覗いてた顔もなんだかんだ言いながら引っ込んでいった。何かから飛び降りる気配がしたので台に乗ってたんだろうと思う。

『すごい覗きもいたもんだ……ん？』

さっきの顔、なーんか見たことあるような………あ。
素早く電伝虫を取り出して、通話を繋げる。

〈どうした〉
『四枚目の写真の男、片割れ見つけました』
〈お前……今どこだ〉
『トイレの中です』
〈……何となく察した。すぐに出てこい〉
『手を洗っても？』

追跡中なう。
手は流石に洗って、先ほどの男を追う。
幸いまだ遠くに行っておらず、付近を見渡したらソッコー見つけることができた。
だが残念なことに、こっちは顔を見られている。近づきすぎた瞬間に終わる。

『顔見られてスミマセン』
「流石にその理屈で文句は言わん」

こっぴどく怒られるんじゃなかろうかと思っていたがそうでもなかったらしい。
先ほど覗いてきた男ともう一人(たぶん壁の外から謝ってきた人間)は俺の記憶通り、写真の男で相違ない。おおよそ十五メートル後ろを素知らぬ顔をしながら着いていく。

「……！この店に入るぞ」

手を引かれて右手にあったアクセサリーショップに入る。
チラリと後ろを見れば、二人組が正面のカフェに入っていった。
なるほどね……と、ひとまずアクセサリーを見るふり。
普通に買い物を始めてしまいそうになるのに注意がいるな。

「彼氏さんとデートですか？」
『あ……はい。そうです』

店員さんが絡んできた。笑顔が引きつってなければいいですけど。
何を思ったか、ルッチさんが寄ってきた。少し離れた所にある鏡に映ったカフェの中から、まだ男たちは動いてはいない。動くぞということではないようだ。

「二人そろうと美男美女ですね。彼氏さん、彼女さんにプレゼントなんてどうですか」
「……どうする？」
『え、どうするって……え？』

なんの選択肢ですか？