SⅥN、海賊の世界に飛んだ一般ピーポーは最強と言う肩書を持ってしまいました。 (ページ20)

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五百三十話目　「おっかないので言いにくい」ページ20

沢山のお店が並び、人もいっぱい。
洋服の人は勿論、ビーチから真っ直ぐ買い物しているのか水着の上からパーカーを着た格好の人間も多い。ついでに言えば長官の言った通り、カップルばっかである。もしくは子連れの家族。

『にぎやかですね』
「そうだな」

そんなとこを、険悪極まりない相手と手をつないで歩いている俺ってなんなんだろう。
ちっとも楽しくない。ずっと緊張している状態で楽しいもクソもあったもんじゃない。
やっぱりカクがよかった。楽しそうな演技がさぞ簡単にできただろう。
演技じゃなくてもあいつ相手なら絶対楽しい。ああ、泣きたい。

「何か見つけたか？」
『いいえ、あっちにも行ってみたいです』

ウィンドウショッピングしてる感じに聞こえるだろうが、意味は全く違う。
上の会話を直せば、「奴らを見つけたか？」「いいえ、あっちを探してみませんか？」である。
案の定遊び要素は全くない。しかし、いつもと違う場所を歩くと言うだけでまあまあテンションが上がってしまうので、まだまだお子様という事を認めざるを得ないのかもしれない。

「……チッ」
『どうしました？』

砂浜の方へ出てきた途端に、ルッチさんの舌打ち。
手をつないだ状態でそれをされるとものすごく怖いのでやめて頂きたい。

「見つからねえな」
『お店も人もたくさんですもん。仕方ないですよ』

捜索開始から三時間はたった。
一向に見当たらない。そりゃ舌打ちもしたくなるか。
そこでだが、大変申し上げにくい事態が発生しました。
正確には十分ほど前から発生していたが、なんせおっかないので言いだせなかったってのが正解ですけどね。

『ルッチさん……ずっと我慢してたこと言ってもいいですか？』
「……なんだ」
『お手洗いに行きたいです』
「……ハァ」

はい、100％呆れられましたー。
流石にカップルのふりをしているので睨まれたりすることは無かったが、どっからどう見てもバカに贈る視線を頂いた。心の底からいらない。
取りあえず、捜索は一旦中止で、トイレに向かう。

「ここで待ってるからな」
『はい』

俺の返事を聞いたルッチさんはトイレの入り口前にあった柱に背中を預けた。
なるべく早く済ませねば。

『さすがリゾート地のトイレ。きれーだし広いし』

何となく一番奥の個室に入る。
やることも終わって、スカートを下ろしたところで、頭上からガラガラと言う音。
なにか窓を開けたような。ん？窓を開けたような？