SⅥN、海賊の世界に飛んだ一般ピーポーは最強と言う肩書を持ってしまいました。 (ページ15)

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五百二十五話目　「頼まれごとは突然に」ページ15

事件は突然やってくるものである。
そりゃあもう、びっくりして腰が抜けるほど。

『え……俺が、ですか？』
「そう、お前が」

朝食を運び終え、いつものように長官室でカクたちと食べていれば、長官が言いにくそうに口を開いた。なんでも、俺に任務に同行してほしいというものだった。
危険は限りなくないし、青雉殿にも許可は貰った、あとはお前の意見しだいと言われた上での会話である。
正直、給仕として仕事をしていたのだ。任務に同行なんて考えてもいなかった。
つか、あの馬鹿はなんで許可なんか出してんだよ。

「まあ、嫌なら断ってくれても構わねえ」
『内容によりけりですね』
「だよなあ……簡単に説明するとだな」

メンバーの一人と目的の島に向かい、革命軍の一派の本拠地を探しだし叩きのめすというものらしい。
その島と言うのがまた厄介で、観光客はほぼほぼカップル。見事にカップル。もはやカップルじゃないと浮いてしまうくらいカップルが多い有名なリゾート地らしい。
最初はカリファが彼女役で行くことにしようとなったらしいが、生憎別の任務。
しかもどちらも急を要するというもので、二進も三進もいかない。

『そこで俺に白羽の矢が立ったと』
「まあ、そういうことだ。今日の昼から出発だ」
『彼女役って……普通にリゾートで遊んでるフリしときゃいいんすかね？』
「まあそうだな」

それなら悪くないかもしれない。
給仕になってから一度もエニエスロビーを出ていない。買い物などもすべてここで済ませられたため、出ようとも思わなかったというのもあるが。
行こうかな、と思ったところでめちゃくちゃ言いにくそうな顔をしながら長官が口を開いた。

「ただな……問題が一つだけあってだな」
『え？』
「その任務にあたるメンバー……要はお前の彼氏役だ。まあ、それがな……」
「俺だ」

言いにくそうに言葉を詰まらせた長官。
その言葉の先が、なぜか俺の背後から聞こえてきた。
振り返れば、信じたくもない現実が突き付けられた。

『え……ルッチさん？』
「そうなんだよ……相手役そいつなんだよ」

ハァ……と頭を抱えながら肯定した長官。
ドッキリでもなんでもないようだ。嫌だ、俺は認めたくない。

『カクとかじゃダメなんですか？』
「そう思うだろ？だがな」
「生憎わしも別の任務なんじゃ」

カクの表情から察するに、これは既に長官と交渉した後だろう。諦めも入っている。
もはや悲しそう通り越して泣きそうになっている。