SⅥN、海賊の世界に飛んだ一般ピーポーは最強と言う肩書を持ってしまいました。 (ページ11)

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五百二十一話目　「ハットリちゃん？くん？さん？」ページ11

「Aは海軍におったというても一般人じゃ。わざと血にまみれた姿を見せるなんぞ……卒倒されても知らんぞ」
「そんなひ弱には見えないがな」

血まみれの俺の姿を見ても、悲鳴を上げるどころか、顔を顰めることもなかった。
ただ、怪我はないかと心配して寄ってきただけだ。
心配という言葉が妙に癪に障り眉を寄せると、何を勘違いしたのかため息をついたカク。

「女の子じゃぞ？……まあいいわい、嫌われても知らんからな」
「それこそどうでもいい」
「目の敵にされんようにな」
「………」

その言葉に返事は返さず、俺はカクの部屋から出た。

ルッチさんの部屋の前である。
肩の上には銀。カクの部屋からここに来る前に自室から連れ出したのだ。
理由は二つ。一つはルッチさんの洋服を回収した後、調理室に顔を出して野菜のおこぼれをもらうため。もう一つは、単純に怖いからである。心底入りたくない部屋。相棒がいれば少しはマシだろうそうだろうってところだ。

『失礼しまーす……』

部屋の主は帰っていないようだ。よかった。
安心して一息つくと、パタパタと羽音が聞こえる。
あらら、と思えば頭の上に確かな重さと温かみ。肩の上の銀が嬉しそうに短く鳴いた。

『見えないから断定できないけどハットリちゃん？』
「ポッポー！」
「ｷｭｲ！」
「ポ！」

挨拶を交わしたらしい二匹。可愛らしい光景だと思うが、いかんせん片方は頭の上なので全然見えない。くそう、惜しい。

『というかハットリちゃんって呼んで嫌じゃないかな？』

オスだよね？と聞くとクルッポ！と元気な返事。
でもなあ、ハットリに「くん」をつけちゃうとなんかいろいろアレだものなあ。
ちくわ持ってこなきゃ(使命感)になってしまう。でも呼び捨てよりも愛称をつけたい。ぬうん。

『ハットリちゃんでいいか。可愛いし』
「ポッ！」

嬉しそうな鳴き声だったから問題ないだろう。
ああ可愛い。姿が見えないのがホントに残念なやり取りだ。
普段からハットリちゃんには構いたい。構い倒したい。がしかし飼い主様が恐ろしい。無念。

『あ、そうだった。服の回収……どこだよ』

血の匂いが充満しているため、においで位置特定は無理です。そこまで鼻が良かったら苦労しない。
キョロキョロと探していると、ハットリちゃんが頭の上から飛び上った。
着地した横にはなるほど例の服が。

『おお、グッジョブだよハットリちゃん』
「クルッポー！」

親指を立てれば自慢げに胸を張るハットリちゃん。可愛い。