【HUNTER×HUNTER】あの奇術師の教育者はこの俺だ！ー子育て編ー (ページ20)

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▼フェイクアクター▼ ページ20

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私はヘッドホンが嫌いだった。
それは私の苦い初恋の思い出が詰まったものだったからかもしれない。
イヤホンの方が何十倍も世界を魅せてくれるような、そんな気がしていた。

“世界の終わり”

何度も何度も終焉を見届けて、終わることのない永遠の世界から解き放たれたのは、私がもう百回目の夏を数えたときだった。
解放されたとき、私は滑稽なほど変わっていなかった。

「…解放、された？」

それは実感の湧かないもので、終わりなどないと思っていた私には衝撃的だった。
目の前には終焉を迎えた世界が新たに創り直され始め、縛られたルールの中に人形同然の人間(ヒト)
が一列に、均等に並んでいる。

こうやって新たな人形を生み出していくのか。

もう世界などどうでもよかった。
たった一つの大切なものさえ失くした今、私には何も残されてはいないのだから。

一人＿＿＿

呆然と見上げた空は、

やはり、創られたように真っ青だった。

＊

私がアクナになったとき、気だるい眠気も、重苦しい体も、何もかもが無くなっていた。
それは多分、死んだことを意味していたのかもしれなかったのに、迷いはなかった。

…可笑しな話だ。

今の姿はかつて手に入れたいと切に願っていたものなのに、まったくといっていいほど価値を見出せない。
“自分”というものを形成していた一つである『体』を失った今、それがどれほどまでに大切なものだったのかを思い知った。

泣き叫ぶ人々、壊れ逝く街、小さな花。

『煉』

滅び行く世界の片隅でつぶやくと、声は叫びの中に溶け込んでいった。
記憶の中で色付いた背中に“目”を凝らす。

“霧島杏奈”だったものは既に抜け殻。

その名前を呼ぶ者はもう、ここにはいない。

私は本当の本当に一人ぼっちになってしまったのだ。

別に、独りは怖くない。

そうして私は誰とも言われず、前を向いた。
いつか嬉しそうに要が話してくれた少女の影を探して、彷徨う私に。

『頑張ったね』って微笑んでほしくて。

そして、私が私だった頃の世界を壊したアイツを探し出さなければならない。

レオナ。

大きく手を振ると、滅び行く世界から私だけが消えた。