組織のNo.2は最推しに瓜２つだった件について５

２４０話、甘美なる甘い囁き ページ45

今までこの人が何をして居たのか──
そんなこと想像するだけ無駄なのに…
少しだけ怖くなる自分が居た気がした


「──A、どうかこれだけは忘れないでいてくれ」


「俺は絶対に君を手放すつもりはない──何がなんでも」


肩を掴まれ、引き寄せられるように杏寿郎さんに抱き締められた
頭を撫でるその手付きはとても優しくって──
とても甘美な甘い囁きのハズなのに
裏を返せばそれは逃げることの出来ない悪魔の囁きに変わる

気にしても意味のないことは考えるな

そういう世界に生きている人なのだから──私が気にしても意味はない

困らせるな、


「……約束…ですよ？」
「男に二言はないさ」
「やだぁ〜カッコいい〜〜っ！」
「はっはっはっ！！」


時折に感じるこの人の恐怖(ほんしょう)への片鱗──
その片鱗が私に向けられた時、私は今みたいに同じように笑えるのだろうか
優しく微笑み、暖かく包み込んでくれるこの腕に抱かれて──








「それでお話と言うのは？」
「あぁ……田中という男を覚えているか？」
「まぁ…はい」


忘れたくても暫くは忘れようがないインパクトだけは充分にあった出来事ですからね、はい
目を細めて前を見据える杏寿郎さんの目付きに、思い出すだけでもご立腹なのが伺えますなぁ
姿勢を正して私も特に何かあるワケではない前を見つめた


「その兄貴分……石田と言う男が愚かにも君に謝罪を申し出てきた」
「……謝罪？」


色々と突っ込みたい気持ちをグッと押さえて、首を傾げた
極道の世界で言う擬似兄弟ってのは知識としてあるが…その兄貴さんが何でまた私に謝罪を…？？
思わず杏寿郎さんの顔を見てしまったが、
まぁ街頭の明かりのせいで丁度、杏寿郎さんのご尊顔がよく見える見える
眉間にシワが寄ってるのもよく見える見える


「──正直、この謝罪に意味はない」
「…そ、そうなんです、か？」
「そうだ……ただの自己満足に君が付き合う必要はない」


「だから、嫌なら断ってくれても良い」


そうは言ってもね、杏寿郎さん──

空気は読めないし、杏寿郎さんとの付き合いもけして長いとは言えない私だけど

今の杏寿郎さんが酷く悲しそうな表情をしている様に見えるのは、フロントガラスに付いている水滴が明かりに反射して影になっているから
なのかな？

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