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58話、何処かで聞いた台詞 ページ10

「煉獄さん」
「ん?」
「今日は本当にありがとうございました…煉獄さんと一緒に来れて最高の1日になりました!」
「…俺の方こそ貴重な体験ばかりだったぞ?」
「そう、なんですか?」
「あぁ、」


そう言って私の髪の毛に触れる煉獄さんの自然の動きに固まった
いや、本当に油断も隙もない
そろそろ慣れても良いとは自分でも思うが──
" これ " には深い意味などはない、ない
煉獄さんにとっての貴重な体験ってのが凄く気にはなるが…
まぁ、煉獄さんの大切な時間を私に使ってくれたんだ
失望だけはされてなくって安心した
煉獄さんの顔を何となく見るのが恥ずかしくなり、自然とお酒を飲むペースが進んだ


「…余りペースを早めると酔いが回るぞ?」
「へ、平気ですよ…これぐらい!私だって少しは飲めるんですから」
「クッ……まぁ、俺としては寧ろ嬉しいけどな?」
「…んぐっ!//ま、またそうや、…って……っ?」


そうやってからかう──そう言い掛けた瞬間、視界が揺らいだ
そんなにペース配分は早くなかったハズだ
久しぶりのお酒と慣れない体験ばかりで身体がついていけてないだけ…?
ドキドキっと心臓の音が速くなるのが何となく分かる
フラつきそうになるのをグッと堪えた


「……大丈夫か?」
「すみません…ちょっとはしゃぎ過ぎちゃったみたいです…っ」


煉獄さんに抱き止められ、安心するように目蓋を閉じて落ち着かせた
なんとも不甲斐ない
はしゃぎ過ぎるなんて子どもぽくって少し恥ずかしい


「──下の階に部屋を取ってある…そこで少し休むか?」
「……そうします、すみません…っ」


強く肩を抱きしめられ「謝らなくていい」っと言う煉獄さんに支えられながらゆっくりと歩いた


──あ、れ?どっかで聞いたことがあるような台詞だったな


ボヤける思考の中、煉獄さんが言った言葉を何度もゆっくりと繰り返したが
結局の所、思い出す前に私の意識はそこから曖昧になったんだ

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作者名: | 作成日時:2021年11月5日 0時

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