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84話、底辺企業 ページ36

夏の匂いがしてきたなぁ〜〜

なんて、他人事とは思えないほどの熱気にウンザリしつつも本日の任務…生きる為に必要なお仕事を終わらせた


生きる為──推しの為に私はお金を稼ぐんだッ!!


常に" 帰りたい "を口癖に休憩室で制服から私服へ着替えていた時、耳を疑いたくなる会話が飛んできた


「ちょっと!会社の前に止まってるベンツ見た?」
「見た見た!あの黒塗り…絶対怪しいって!」


…………。
最近、見慣れてきた高級車の単語に思わず固まった
いやいや!まさかね…っ
人違いだよ!あの人だって暇人じゃないんだし…
私の職場を特定してるハズだってない…だろ?
そそくさと光の速さで着替えを終わらせ「お疲れ様で〜す」っと一礼して逃げた
逃げ際に「気をつけてね!」なんて物騒な忠告を受けたけど、人違いだから大丈夫ですよ〜
職場の敷地から出れば私は晴れて自由のみ…っ!
さぁ、待ってて愛しいコン寿郎さぁん…っ!!


「…おや、こんな所で偶然だなA」
「……人違いです」
「このまま無理やり拉致しても良いんだぞ?」
「……失礼します。」


一礼して素早く高級車に乗り込む手慣れた手付きに自分を褒めた
噂の黒塗りおベンツの前を通り過ぎようとした瞬間、車の窓が降りて聞き覚えのある声が振ってきたものだから
目線を前に向き顔色1つ変えずに答えれば、爽やかな声で脅迫されたので言うことを聞く素直な私


「……なんで職場分かったんですか?」
「聞きたいか?」
「遠慮します!」


質問を質問で返す時は絶対にろくな事ではないのは直感で分かる


この人の手に掛かれば私の情報なんて手に取るように知ってるんだろうなぁ〜


さらば、個人情報…っ
内心だけでも泣かせてくれ!
まぁ、知られて困る情報は無いけどな!


「──よくこんな底辺企業に勤めてられるな?」
「…それでも自分にとっては都合が良いので…それに合ってる職種だと思ってるから」
「──潰してやろうか?」
「今の話聞いてましたッ!??」


冷たい視線を私の勤め先に向ける煉獄さんに苦笑い
自分に合った職種だから──低収入でもそれなりに都合がいいんだ
それなのに何を聞いていたのかは知らないが、潰してやろうか?なんて言い始めた煉獄さんに思わず突っ込みを入れてしまった
勝手に潰されても困る!
職業難を嘗めないでくれ!!!


「困るので止めてください!切実にッ!」
「俺が新しい勤め先を提供してやろう!…そうだな、住み込みで今の給料の倍は出そう」
「! ほぅ…!」

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作者名: | 作成日時:2021年11月5日 0時

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