393話、──寂しかった。 ページ5
部屋の襖が荒々しく開き、ゆっくり畳の上へ降ろされた頃にはドッとよく分からない疲れが襲ってきた
拉致・誘拐と言われても言い逃れ出来ない拐い方をした本人は静かに自室の襖を閉めた
「んんッ!!ネクタイは反則ですっ!」
「着替えに来たのだから反則と言われても困ってしまうな」
「ぁ…、手伝います!」
「頼む」
振り返り際のネクタイを緩める動きに黙っていられる人は居ないハズ!!異論は認めない!!
両手で口元を隠して何度も何度も頷いた
くそかっこいいっ!!!
叶うことなら涙を流しながらこの何とも言えない気持ちを叫び散らかしたい衝動をグッと堪え、杏寿郎さんの着替えを手伝った
杏寿郎さんが後ろを向いてることを良いことに私は緩みにゆるんゆるんの頬を釣り上げた
「……杏寿郎さん」
「ん?」
「寂しかった」
受け取ったジャケットをハンガーにかけ、クローゼットの中に入れ杏寿郎さんの方を見ればYシャツのボタンを外している後ろ姿に思わず抱きついた
──寂しかった。
忙しい人だって分かってるからこそ、これは我が儘だ
「…寂しい思いをさせてすまない、どうしても外せない用事があってだな」
「んー、知ってます。杏寿郎さんが……わ、私より優先する大事な用事ってことぐらい」
「……ほぅ、漸く自分の価値を理解して貰えたようだな」
正直、自分で言っていて恥ずかしかった
是非とも笑って流して貰いたかったけど、無理な話であった
恥じらいを誤魔化すように杏寿郎さんを抱き締める腕の力を強めた
優しい声色で名前を呼ばれたけど、無視して首を振った
ふりほどこうと思えば簡単に出来るのに──、
そんな、優しさが嬉しくなる
「──A、俺も抱き締めたいのだがダメだろうか?」
「ダメ!寂しい思いさせたので…我が儘、許してください!」
「うーむっ、………やはりダメだ!俺が我慢できない」
止める声を上げる間もなく杏寿郎さんは振り返っては、キツく抱き締めるモノだから
私から折れる方が早かった
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棗(プロフ) - 葵さん» コメありがとうございます!評価に関しては全然気にしていないので、気に病まないで下さい!大丈夫です!寧ろいつも読んで頂きありがとうございます。此処まで辿り着くのに貴重なお時間を……まだまだ続きますが宜しくお願いします! (2022年5月27日 22時) (レス) id: f6f7f83bec (このIDを非表示/違反報告)
葵(プロフ) - 更新されたらすぐに見てます!評価は毎回10点にしているのですが、今更新している9作品名ではスクロールしていたら間違えて変な所の評価を押してしまいました。すみません。応援しています。頑張ってください! (2022年5月27日 1時) (レス) @page17 id: 45176a09e8 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:棗 | 作成日時:2022年5月13日 21時