・ ページ48
「魔力を流すと甘みが増すクリムゾンオレンジのジュースです。到着までもうしばらくあるのでお待ち下さい」
「ありがとうございます」
「カザハ様もいりますか」
「貰う」
ガジャさんから受け取ったヤシの実のような果実を飲むと、程よい苦みがある味が広がる。
飲みながら魔力を流し込むと、それは途端に上品な甘みが加わってとても美味しくなった。
「美味しい…！」
「光栄です」
もうすぐ岸につくあたりまで船が進むと、水がひとりでに動き出して目の前に巨大な水の階段が創成された。
そこに導かれるように船が登っていく。
「これは…魔法ですか？」
「はい。最初に見られた霧の結界やこの水の階段は、王女の国中を覆うマナゾーンの力によるものです」
「たった一人の魔道士で…！」
この国の王女は本当の意味で魔に愛されているのだろう。
うちの国王にも見習わせたい。切実に。
「あの…私達はこのままどちらに向かうのですか？」
「私は反対したのですが、王女が是非アナタにお会いしたいと仰っていたので、そちらへ」
「え」
思ってもみなかった返答に思わず声を上げた。
まさかハート王国の王女が直々に私に会いたいだなんて。
せめてもの義母への抵抗として、ドレスではなく団服で来たのだが大丈夫だろうか。
いやきっと大丈夫だ。ガジャさん何も言わないし。
階段の最上階まで着いて船から降りて、ガジャさんに案内される。
一際大きな建物の中に案内され、そこで改めて姿勢を正した。
カザハは大人しく私の後ろで待機している。
「王女がお見えです」
ガジャさんの言葉を合図に目の前の扉が開いた。
「＿＿＿！」
現れた人物に私は思わず息を呑んだ。
ヴェールの付いた王冠を被り、長い杖を持って歩く彼女は一目で王女だと分かった。
それに何より、荘厳で美しい膨大な魔力。
この魔力が国土全土を覆い尽くしているのだ。
「…お初にお目にかかります。クローバー王国魔法騎士団、金色の夜明け団のA・ヴァンジャンスと申します」
右手で三本指を立てて胸の前に置き、敬礼の姿勢をとって挨拶する。
「ようこそハート王国へ…私は王女のロ…ああーー」
王女が名乗ろうとした瞬間、彼女は自分のドレスの裾を思いっきり踏んづけて盛大に転んだ。
「ええええええ大丈夫ですか！？」
「だから直々に会わない方が良いと言ったのに…」
反対した理由はそれか、と妙に納得してしまった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 263人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「逆ハー」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
なな - こちらこそ、ありがとうございます。 (2019年12月1日 20時) (
レス) id: 1a6326dc3e (このIDを非表示/違反報告)
HANON(プロフ) - ななさん» 刺激的なお話ですね！書いてみます。ななさんリクエストありがとうございました。 (2019年12月1日 15時) (レス) id: 88d49bbab8 (このIDを非表示/違反報告)
なな - リクエストです。夢主の義理の母が、来て夢主の結婚の話をしているところを、誰かが盗み聞きという話って書けますかね。 (2019年12月1日 13時) (レス) id: 1a6326dc3e (このIDを非表示/違反報告)
HANON(プロフ) - 柚さん» 刀と驚きでほぼほぼ確定ですね！そうです鶴じいさんです。柚さんコメントありがとうございました！ (2019年11月16日 23時) (レス) id: 88d49bbab8 (このIDを非表示/違反報告)
柚 - 人生には驚きが必要だ…!まっまさか!鶴さん!?鶴丸国永こと鶴じいなんですか!? (2019年11月16日 23時) (レス) id: 441c37839d (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：HANON | 作成日時：2019年9月28日 0時
